シンデレラの罠
『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ(創元推理文庫)

私は20歳の娘、億万長者の相続人です。私がこれから物語る事件は、巧妙にしくまれた殺人事件です。私は事件の探偵です。また証人です。また被害者です。そのうえ犯人なのです。いったい私は何者でしょう?1人4役を演じる女主人公という空前のトリックで展開する62年度の話題をさらった世界的な問題作。シンデレラの罠は、はたしてどこにあったのか?(本書あらすじより)

ようやく読めました。高松で買って、その調度一年後に高松で読むという奇跡。なんのこっちゃ。

で、うーん、これはなかなか感想が書きにくいです。
読み終わった感想としてまず出て来たのが、ビル・S・バリンジャー『歯と爪』と非常に良く似ている、ということですね。いや、トリックが似ているというわけでは全くないんですが。大きく共通しているのは、

・知名度が高く、読む前から読者の期待が高すぎる
・キャッチコピーが実際以上に派手(袋とじ、とか、一人四役トリック、とか)
・当時としては新しかったんだろうけど、現代ではそこまで意外性を与えにくいトリック
・心理描写が秀逸で、むしろトリックとかより、ストーリー面において楽しむべき作品であること

でしょうか(実を言うと、3つ目のポイントに関しては『シンデレラの罠』はやや当て嵌まらないんですが、それについては追記に伏せ字で記します)。
読んでいて、非常に面白かったのは確かです。先の読めない展開にとにかく引き込まれますね。主人公によるどことなく不安定な文章に、読者が読まされてしまう、というか。訳文のせいで読みにくいという指摘をしばしば見かけますが、数ある”読みにくい”フランスミステリの中では、むしろ読みやすい方ではないかと思います。今は新訳版も出ていることですし。こういう「おフランス」な雰囲気の文体って、フランスミステリの最大の武器ですよね。

というわけですから、トリックメインで読まないのがむしろ大事な作品です。そういう意味では、ミステリ読み始めの頃に手に取りたかった作品かも。
……これ以上はネタバレなしでは書けそうもないので、追記に、ということにします。ミステリファンであれは必読の傑作だと思いますが、過度な期待は禁物。ミステリだとか気にせず、ぜひ、物語の空気に浸ってほしい一冊です。

書 名:シンデレラの罠(1962)
著 者:セバスチアン・ジャプリゾ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mシ-2-1
出版年:1964.11.27 初版
    1999.9.10 43版

評価★★★★☆






















【※以下、伏せ字内にネタバレを含みます】

『シンデレラの罠』は、あくまでワンアイデアに支えられた作品です。生き残ったのは、ミかドか?そしてその問いに対する明示的な答えのないまま、物語は終わってしまいます。F・R・ストックトン「女か虎か」以来のリドルストーリー、というわけですね。
読者は、おそらく読んでいる途中、主人公がミであることに対して疑問を抱くでしょうが、その疑問は割合早々と作中で指摘されます。さらに読者は、やっぱミじゃないか?という疑問を抱くでしょうが、これも終盤で示されます。
ということはある意味、『シンデレラの罠』は、この時点で「読者の意外性を誘わない」作品になってしまっているわけです。早々と読者の疑問を解くこと自体は評価出来ますが、結局それ以後どんでん返しがないため、「ミステリ」としての驚きが限られたものになってしまうことは否めないでしょう。ただしこれにより、『歯と爪』のように、作者が意外性を図るも全く成功しない、という結果は避けられています。


ミかドか?という最終的な答えですが、タイトルにある「シンデレラ」という単語が2回しか用いられていない(エピローグとプロローグ)ことから、やはりそこにヒントがあるのではないか、という気がします。
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