占い師はお昼寝中
『占い師はお昼寝中』倉知淳(創元推理文庫)

渋谷のおんぼろビルにある「霊感占い所」には、今日も怪異な現象に悩むお客さんがやって来る。彼らの相談に応えて占い師の口から飛び出すのは、三度狐に水溶霊と、珍奇な妖怪の名前ばかり。それらは全部インチキだが、しかし彼の「ご託宣」はいつも見事に怪異の裏に隠された真実を突く。霊感は無いが推理は鋭い辰寅叔父の、昼寝と謎解きの日常を描いた心優しき安楽椅子探偵連作集。(本書あらすじより)

いよいよこれで、「日常の謎」系統の長編課題本が全て終了。な、長かった……。
ひとまず目次。

「三度狐」
「水溶霊」
「写りたがりの幽霊」
「ゆきだるまロンド」
「占い師は外出中」
「壁抜け大入道」

一言で言うと、イマイチ、でした。悪くはないんですが、面白い!と言えるには一歩足りなかったかな、という感じです。

エセ占い師・辰寅叔父のもとを様々な依頼人が訪れ、怪奇現象を語り、叔父はそれを何々という妖怪なり幽霊の仕業だと断言し、お祓いなり助言なりをして、依頼人は何かスッキリしない気持ちで帰る。しかし実は、その怪奇現象はきちんと説明出来るもので、叔父はその真相を伝えることなく、独創的な解決法でもって(お札を渡す、とか)依頼人の悩みを解決する、というのが基本的なパターンです。いわゆる安楽椅子探偵物。

で、そうなると、個人的には見所は大きく2つ。怪奇現象(通常なら不可能としか思えない現象)はどのように合理的に説明されるのか、と、辰寅叔父はどのように解決するのか、です。この要素が最もはっきりと、またしっかり出来ているのが第1話「三度狐」です。
そして第2話「水溶霊」も同様ですが、この話では辰寅叔父が人間心理の非常に嫌な部分をえぐり出すため、個人的には結構感心した、というか、ゾクッとしました。この書き方は上手いです。

しかし……第3話以降が、全然のれないんですよ。出来不出来の問題ではなく、どの話もなんかテイストが似ているため、マンネリというか、飽きてしまう、というのが原因だと思います。また、怪奇現象はいかにも「日常の謎」的な真相で良いとは思いますが、辰寅叔父の示す解決策が後はそれほどでもないのが多く、読み終わって、え、これだけ?と感じてしまうんですよ。だいたい怪奇現象は持ち込まれた時点で終わっているものばかりで、叔父の独創的な解決策もパターン化してしまうんです。まぁ、この点を読み所にしている人はあまりいないのかもしれませんが、第1話のような、「依頼人に真実を告げることなく、なおかつ事件を終わらせられるような独創的なもの」が2話以降に引き継がれなかったというのは非常に残念です。

怪奇現象の説明も、辰寅叔父が人間心理を鋭く見抜いたもので出来は良いんですが、やはり真相が似ているものが多いですね。「水溶霊」と「占い師は外出中」が似ているのは問題です。「占い師は~」はこの間読んだアシモフ「黒後家蜘蛛の会」シリーズに同じようなものがありましたし。「三度狐」と「写りたがりの幽霊」も似てるような。最終話「壁抜け大入道」はちょっとイレギュラーですが、イレギュラー過ぎる上、叔父の行動・セリフが妙にあっさりしており、やや肩透かし感があります。マンネリ化を防ぐためシリーズ化しなかったのでは、とすら思えるんですが。

辰寅・姪の美衣子のキャラの組み合わせはなかなか面白いし、ユーモラスな文体もほどよく、一話一話は悪くないんですけどねぇ。短編集としては、まぁ可もなく不可もなく、って感じでしょうか。

書 名:占い師はお昼寝中(1996)
著 者:倉知淳
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mく-2-2
出版年:2000.7.21 初版
    2000.8.18 2版

評価★★★☆☆
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