ロイストン事件
『ロイストン事件』D・M・ディヴァイン(現代教養文庫)

「至急助けが要る。きわめて重大なことがわかった。おまえの義弟は…」4年前に勘当されたマークは、突然父から呼び出され実家に戻ったのだが、その日の夜、父の死体が新聞社内で発見された。父は勘当の元になったロイストン事件の再調査をしていたようだ。それは教師をめぐるスキャンダルだったが、弁護士だったマークは父の意に逆らい、義弟を偽証と証拠隠滅で告発したのだった。父が見つけたものとは、いったい何だったのか?(あらすじ、大幅に改変)

世評的には、あんまり評判のよろしくない作品です。ディヴァインにしては……みたいな感想をどっかで読んだ気がします。ふむ、とはいえ、自分の大好きなディヴァインです、読んでみないことには何とも言えません。

――読みました。
だれだ、これつまんないとか言ったのは。むっちゃ面白いじゃないか!これぞまさしくディヴァイン!貸してくれたN君にマジ感謝!!

なんというか、いかにもディヴァインらしい作品です。もう地味。地味。地味なことこの上ない。主人公が事件に巻き込まれていく展開、他作品で見たことあるような気がしないでもない(にもかかわらず良く書きこまれ秀逸な)登場人物、そしてクソ真面目とすら言える純粋なまでの本格ミステリへのこだわりっぷり……全てディヴァイン臭プンプンです。おぉう。

なぜ、評価が低いのか……いえ、その答えはもちろん、ミステリとしての完成度が決して高いわけではないから、でしょう。確かに、犯人の意外性はそれほど高くはない、かもしれません。手掛かり・決め手となる証拠も、他のディヴァイン作品と比べると何だかなぁという感じ。

にもかかわらず。丹念に作り込まれたプロットとその細かい描写が相まって、読んでいてひたすら引きこまれます。もうグイグイ読まされます。例えば今回登場人物はやや多めですが、全員をバランス良く描き分けているため、ストーリーとしての面白さが見事に生まれているわけです。むむむ、この人はいったいどうなるのかしらん、という興味がつきないんですよ。
またミステリとしても、犯人を示すために置かれた無駄に多い伏線の数々にはやはり感心せざるを得ません。読み終わって、うぅむなるほど、となることは確実。先程キャラの描き分けが上手いと言いましたが、その描き分け・人物造形の巧みさが上手いからこそ成立する意外性もあるわけで、まさにディヴァインの本領発揮といったところです。つくづくクリスティに似た作家ですね、いやまったく。

なお、解説で真田啓介氏が素晴らしい解説を書いていますが、ディヴァインの用いたとあるミスディレクション(と言っていいのかどうか)について否定的なコメントを書いているのはどうかなぁと思いました。構成的にまとまりに欠けてしまう、というのは分かりますが、むしろこの設定により登場人物たちの関わりがそもそも発生していること、および前半から後半への事件のポイントのダイナミックな変化の面白さ、などから、むしろ評価すべき点ではないのかな、と思ったのですが。


というわけで、これが彼の最高傑作だというわけではもちろんないんですが、面白さは保証できます。まだ『こわされた少年』『災厄の紳士』は読んでいないんですが、個人的には3位に位置する完成度ではないかと。つまり、
1、『悪魔はすぐそこに』 2、『五番目のコード』 3、『ロイストン事件』
てな感じです(ちなみに、世評の高い『三本の緑の小壜』はどうも良さが分からん……)。『悪魔はすぐそこに』は、犯人の意外性という点で、ちょっとね、レベルが違います。『五番目のコード』は彼にしては派手な展開と、良く作り込まれた構成が素晴らしい傑作。本格ミステリ好きでディヴァインをまだ読んでいない人、およびクリスティが好きな人は、読まなきゃ損です。さぁ~東京創元社さん、今年もたのんます。

書 名:ロイストン事件(1964)
著 者:D・M・ディヴァイン
出版社:社会思想社
    現代教養文庫 3047 ミステリ・ボックス
出版年:1995.5.30 1刷

評価★★★★☆
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