裏返しの男
『裏返しの男』フレッド・ヴァルガス(創元推理文庫)

フランス・アルプスの村で、羊が噛み殺される事件が続いた。喉に残された巨大な狼の歯形に人々は恐怖した。山で暮らす、変わり者の男こそ狼男だ、と主張し始めた女牧場主が殺され、その喉にはやはり巨大狼の噛み痕が……。グリズリー研究家のカナダ人とその村で暮らすカミーユは、友人だった女牧場主の死に引き寄せられ、事件に巻き込まれていく。そしてニュースで事件を知り、村の映像に忘れがたいかつての恋人カミーユが映ったのに気づいたアダムスベルグ警視が事件に興味を抱き……。仏ミステリ界の女王の傑作。CWA賞受賞シリーズ第二弾。(本書あらすじより)

いよっ、待ってました!
1作目の『青チョークの男』を読んだのはついこの間ですが、それ以来自分はアダムスベルグ署長の大ファンです。この人の捉え難いまったりとした感じが、もうね、大好きなんですよ。

……と思っていたら、なんと舞台が山だと言う。え?え?どういうこと?
実は、前半は全体的にカミーユ(前作で忘れがたい印象を残したアダムスベルグの元カノ)が主人公なんです。アダムスベルグはちょこちょこ出てきますが、主役として活躍し始めるのは後半に入ってから。前半と後半で主役が交代しているようです。よく分かりませんが。
というのも、アダムスベルグはパリ五区の警視なわけですから、事件がパリで起きない限り、彼は主役になりえないわけです。で、狼ですからね、田舎ですよ田舎。このへんが都会が舞台だった前作との大きな違いでしょうか。

いやー、しかし、相変わらずの面白さでした。前作同様、登場人物は意味分からん奇人・変人たち。ゆるーい空気の中もったりと話は進みますが、その実本格ミステリで、最後には意外な犯人が明らかになります。
……というと、ちょっと語弊があります。ミステリとしての完成度は、おそらく前作には負けるでしょう。犯人の身元を表す手掛かりが出てくるのもタイミング的にはちょっと遅すぎ。消去法的にも犯人はこの人しかいない、という感じ。

ですが、このシリーズにはミステリとしての完成度以前に「読んで良かった!面白かった!」と言える魅力でいっぱいです。やはりヴァルガスのキャラクター造形がピカいちだというのもありますが、そうした登場人物により紡がれる全体的な雰囲気というか、幻想的・ファンタジックな空気がたまらなく居心地がいいんです。作品内に独自の世界を構築できるという点においては、ヴァルガスは天才的だと言ってよいです。2日間一気読み。良作をありがとうございました。

1つだけ文句を付けるなら……アダムスベルグをもっと出しやがれこのやろう。

というわけで、まずは『青チョークの男』を読んでみてください。そこでハマる人には、『裏返しの男』も文句なしの傑作であるはずです。

書 名:裏返しの男(1999)
著 者:フレッド・ヴァルガス
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mウ-12-4
出版年:2012.1.27 初版

評価★★★★☆
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