インディアン・サマー騒動記
『インディアン・サマー騒動記』沢村浩輔(ミステリ・フロンティア)

「もしかして俺たち――遭難してるのかな」「遭難と決めるのはまだ早い。要は気の持ちようだ」軽い気持ちで登った山で道に迷い、その夜無人駅に泊まる羽目に陥った大学生・佐倉とその友人・高瀬は、廃屋と思い込んでいた駅前の建物“三上理髪店”に深夜明かりが灯っているのを目撃する。好奇心に駆られた高瀬は佐倉が止めるのも聞かず、理髪店のドアを開けてしまう。そこには…第四回ミステリーズ!新人賞受賞作の「夜の床屋」ほか、子供たちを引率して廃工場を探索することになった佐倉が巻き込まれる、真夏の奇妙な陰謀劇「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」など全七編。“日常の謎”に端を発しながら予期せぬ結末が用意された、不可思議でチャーミングな連作短編集。(本書あらすじより)

うぅん……何だかなあ。
1つ1つの短編は悪くないんですよ。ただ、これはあくまで「連作短編集」ですから、読み終わって、ある程度のまとまりを読者が感じることができるようになっている方が良いと思うんです。たぶん。

で、この『インディアン・サマー騒動記』、そういう観点から見ると、致命的と言っていいような弱点があります。一言でいえばまとまりがないんです。各話をざっと見ると

「夜の床屋」……日常の謎→犯罪
「空飛ぶ絨毯」……日常の謎?→犯罪
「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」……日常の謎
「葡萄荘のミラージュⅠ」……宝探し
「葡萄荘のミラージュⅡ」……つなぎ
「『眠り姫』を売る男」……犯罪&ファンタジー
「エピローグ」……ファンタジー

……なんじゃこりゃ。この本を「日常の謎」系統のものだと思って手に取る人は結構多いと思うんですが、まぁ良い意味でも、悪い意味でも裏切られるというか。

さっきも言いましたが、1つ1つは悪くありません。「夜の床屋」の何とも魅力的な謎の提示、「葡萄荘のミラージュ」の暗号、「『眠り姫』を売る男」の一風変わった犯罪小説……という感じ。ちなみに、佐倉君という人が一貫して語り役ではあるんですが、探偵役が毎話コロコロ変わっていくんですよね。これは結構面白い趣向だと思います。作品単体として面白かったのは、いかにも日常の謎らしい「夜の床屋」と、伏線の張り方が本格的な「空飛ぶ絨毯」でしょうか。
ただ、やはり戴けないのが「エピローグ」。ここまでの流れが既にジャンルが錯綜していて宙ぶらりんなのに、この「エピローグ」によってさらに宙ぶらりんというか、どっちらけになってしまうんです。そこまで全部ひっくり返す必要はあったのかなぁと。驚愕の結末という意味では、ま、成功しているわけですが。この終わり方を気にいる人も結構いるとは思いますが、うぅん、自分は無理でした。ゴメン。

ファンタジーとミステリの融合を図った作品は割合たくさんあると思います。ただ、そういう場合、そのファンタジーは唐突というより、話全体を通じて浸透させていくようなものである方が好ましいのではないかな、と。ジャンルの越境というのはなかなか難しいもんですね。
ま、作者にとって一番の不幸は、あらすじに「“日常の謎”に端を発しながら予期せぬ結末が用意された、不可思議でチャーミングな連作短編集」と書かれてしまったことでしょうか。

書 名:インディアン・サマー騒動記(2011)
著 者:沢村浩輔
出版社:東京創元社
    ミステリ・フロンティア 65
出版年:2011.3.25

評価★★☆☆☆
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