ワンダーランドの悪意
『ワンダーランドの悪意』ニコラス・ブレイク(論創海外ミステリ)

「諸君、マッド・ハッターに気をつけろ!」ダンスホールに響き渡ったこの声が奇妙な事件の幕開けだった。休暇用キャンプ〈ワンダーランド〉で次々と起こるいたずら。テニスボールに糖蜜がかけられ、ベッドに動物の死骸が置かれ……。『不思議の国のアリス』の登場人物いかれ帽子屋(マッド・ハッター)を名乗る犯人の正体とは、そしてその目的とは。英国ミステリ界の巨匠ニコラス・ブレイクの初訳長編。(本書あらすじより)

『骨と髪』に続いて単行本です。こういう本を読むには、お財布の尊厳を守るためにも、図書館の協力が必要不可欠。地元の図書館様、いつもお世話になっております。ちなみに論創海外ミステリはドナルド・E・ウェストレイク『忙しい死体』しか読んだことがありません(あれは面白かったなー)。やっぱり単行本にはなかなか手が回らない……。

というわけで、初ニコラス・ブレイクです。代表作『野獣死すべし』は相変わらず無駄に値段が高騰していますが、この間170円で初版をゲットしたので、いずれ読みます。いずれ、ね。

というわけで、かなりの期待を持って読み始めたんですが……。うぅん……。

いえ、面白いんです。決してつまらないということはないし、最後まで楽しんで読めました。〈ワンダーランド〉というファンタジックな舞台はなかなか素晴らしいと思います。そもそも『不思議の国のアリス』の大ファンとしては、もうこの"Malice in Wonderland"というタイトルの時点で魅力的なことこの上ないです。あ、でも、個人的には、『不思議の国のアリス』より『鏡の国のアリス』の方が好きですけど。いや、そういう話じゃなくて。

ただ……いくら舞台が魅力的で、勃発する事件のみみっちさが面白くても、やっぱり長編を持たせるだけの力が、そもそもネタとして難しかったんじゃないかなぁと思います。要はパンチが弱いというか。最初のうちは「いたずら」が面白いんですが、中盤はかなりダレた感があります。
後半になると、特にシリーズ探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが登場してからは、ちょっと持ち直します。ラストの方では急に緊張感も上がって来ますし。ただ、今度は真相がイマイチというか。いえ、これは真相がイマイチなのではなく、その見せ方に問題があったんじゃないかと思います。せめてもうひとひねりあるよね、と読者に期待させてしまうのはちょっと酷かな、と。

ついでに、話と並行するようにして、とあるラブロマンスが進行します。このラブロマンス、意外に重要な要素となっていくのですが、このポールとサリーが……前半では、何というか、その、軽くウザい(笑)どっちもツンデレで……あぁもうイライラするっ!性格悪いだろおまえらっ!と何度突っ込んだことか。

というわけで、あと一歩でかなり面白い作品に仕上がっていただろうに、ちょっと惜しいなぁというところ。人が死なないゆるゆる系ミステリ好きにはオススメかもしれません。

書 名:ワンダーランドの悪意(1940)
著 者:ニコラス・ブレイク
出版社:論創社
    論創海外ミステリ 96
出版年:2011.11.25

評価★★★☆☆
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