解錠師
『解錠師』スティーヴ・ハミルトン(ハヤカワポケミス)

けっして動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。でも、力加減さえ間違えなければ、すべてが正しい位置に並んだ瞬間に、ドアは開く。そのとき、ついにその錠が開いたとき、どんな気分が想像できるかい?八歳の時に言葉を失ったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開くことが出来る才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり芸術的な腕前を持つ解錠師になる……MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞をダブル受賞した話題作。(本書あらすじより)

これは良エンタメですねー。海外エンタメの真髄、というか。

主人公マイクルの、「解錠師」となる前(~1999年)と後(1999年~)が章ごとに交互に語られていくのですが、このありがちな構成が実に上手いです。ネタのばらし具合、読者が未来を分かっているだけに不安感と安心感が漂う過去などなど。しかも、過去が緊張に満ち満ちている時は現在はおとなしめ、逆もまたしかり、など、何とも読者のテンポをつかんでいますね。

どなたも指摘されていることですが、鍵を開けるシーンが毎回お見事です。アクションのないおかげで、むしろ適度に緊張感があり、そして鍵の開いた瞬間のホッとした空気が何とも言えません。開ける鍵も毎回趣向が凝らしてあり、過去→現在と行ったり来たりすることで、その対象・難易度も様々なものとなります。もうプロットの勝ちですね、ホント。

わずか18歳前後の主人公マイクルは、過去のある事件により一言も言葉を発しません。この主人公設定がまた良いんですよー。一人称の心の中でしか言葉を発さない(しかもそれが皮肉っぽかったりする)主人公がこんなに魅力的だとは思いませんでした。これは一種の青春小説でもあり、彼が想いを寄せるアメリアとは、当然言葉を介さないやり取りがなされるわけですが、これが美しいのなんのって。マンガ形式というのはナイスアイデアです。1コマ1コマと説明されていくのが楽しすぎます。

その他細かく挿入される気のきいたエピソードも含め、とにかくエンタメとして特化されており、良く出来ているなぁと思いました。話の展開が自然なことも嬉しいですね。

惜しむらくは、最後の展開がかなりあっさり目であること。特にラスボスの処理がね……そんな簡単でいいのかよ、という。だいたいラストに向けてのマイクルの行動が、それまでのマイクルの行動と比べてかなり違和感を感じるんですよね……。出来ればもうひとひねりして欲しかったところですが。

ま、とにかく、楽しめる一冊ですよ。『二流小説家』なんかよりよっぽど万人受けすると思います。
そして散々褒め倒しましたが、やっぱり自分は地味な古典的本格ミステリが読みたいです(笑)

書 名:解錠師(2009)
著 者:スティーヴ・ハミルトン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1854
出版年:2011.12.15 初版

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/744-adf4ec64