青チョークの男
『青チョークの男』フレッド・ヴァルガス(創元推理文庫)

パリで続く奇妙な出来事。夜のうちに歩道に青いチョークで大きな円が描かれ、朝、人が見つけるとき、その中には何かが置かれている。クリップ、羊肉の骨、オレンジ、人形の頭、本、蝋燭………およそガラクタばかりだ。そして<ヴィクトール、悪運の道、夜の道>という文字が必ず。誰がなぜこんなことを?人畜無害な偏執狂のイタズラと思われていたが、ある朝、様相が一変する。円の中には喉を切られた女性の死体があったのだ。そして、また一つ、また一つ、死体を囲む青い円。奇怪な事件となった青い円の謎に五区警察の署長アダムスベルグが挑む。現代フランス・ミステリ界の女王、フレッド・ヴァルガスの傑作シリーズ第一弾。(本書あらすじより)

初ヴァルガスです。「三聖人」シリーズでしたか、あっちは未読。フレッドというから男かと思ってたら、あらすじをみたら「女王」だそうです。フレデリックを略してフレッドなんだとか。フランス人の名前はピンと来ないなぁ。

……そんでもって、これはまたとんでもないミステリですね。素晴らしいです。もう何というか、強烈な魅力を持っているように思います。

体裁としては、真っ当な本格ミステリなんですよ。円の中にがらくたが置かれるという謎が、やがて殺人事件に発展する。何人か容疑者がおり、最終的にアダムスベルグが犯人を突き止める、というわけで、一見まともそうな本格ミステリに思えます。

ところが、「殺人事件」を扱っているはずなのに、まったく現実味がないんですよね。ファンタジックとすら言える不思議な雰囲気です。けだるくぼんやりとしたまま、妙な緩急を付けて話が進むんですよ。いかにもフランスミステリらしいです……って、そんなにフランスミステリを読んでるわけじゃないですか。最近読んだものだと、『ウサギ料理は殺しの味』の雰囲気とか。やっぱりファンタジックじゃないですか。
そもそも、解説にもある通り、登場人物がエキセントリックでまともじゃない。現実感のない人ばかりですが、特に主人公アダムスベルグ、彼はすごいですよ。これほど訳の分からない主人公は初めてです。もうファンにならざるを得ないです。彼の活躍が見たいがために次作は必ず読みたくなる、そんな人です。
物語は、そのエキセントリックな登場人物たちによる会話主体で進行します。変な人たちが変な会話を繰り広げているわけで、とにかくグイグイ読ませます。一体この話はどこに向かってるんだ、という面白さ。ちょっと薄めな分量もピッタリです。

ミステリとしての出来も良く(もっとも、犯人当てに関してはある点がマイナスです。追記にでも書きます)、非常に満足できる一冊でした。いやー面白かった。今月出る新刊が楽しみです。

ところでこの作品の発表年が、いまいちよく分かりません。翻訳権のページでは1996年、解説によると1990年です。wikipedia英語版では、1996年だったり、1991年だったり(作者ページと作品ページで年代が違う)。wikipediaフランス語版は1991年です。うーん……多数決で1991年にします(笑)今月出る新刊の巻末で明らかにされる……か?

書 名:青チョークの男(1991?)
著 者:フレッド・ヴァルガス
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mウ-12-2
出版年:2006.3.24 初版

評価★★★★☆
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