水時計
『水時計』ジム・ケリー(創元推理文庫)

痺れるような寒さの11月、イギリス東部の町イーリーで凍った川から車が引き揚げられた。トランクには銃で撃たれ、死後に首を折られた死体が入っていた。犯人はなぜこれほど念入りな殺し方をしたのか?さらに翌日、大聖堂の屋根の上で白骨死体が見つかる。二つの事件が前後して起きたのは偶然か?疑問を抱いた敏腕記者のドライデンは調査をはじめるが――。ねばり強い取材の果てに、彼がたどり着いた驚愕の真相とは。堅牢きわまりない論理、緻密に張られた伏線。CWA賞受賞作家が硬質の筆致で描きあげた現代英国本格ミステリの傑作。(本書あらすじより)

1月にこのシリーズの新刊が出るので、読みました。作者名が覚えにくいと思います。読み始めて、久々に翻訳物って読みにくいなぁ、なんて思いました。そんなこんなで読み終わりました。

……やばい、これは傑作。というか、めちゃくちゃ自分好みの作品でした。すごいぞジム・ケリー、名前が地味とか言ってごめん。個人的に、ウィリアム・モール以来の覚えにくい作家名です。いやそんなことじゃなくて。

とにっかく地味な本格ミステリです。派手さはほぼゼロ。『ナイン・テイラーズ』から題材を取った(いいぞジム・ケリー)とかで、初っ端いきなり洪水が起きていますが、それすら地味。古き良き黄金時代の本格ミステリ、とも言えます。自分が読んだことのある作家では、アン・クリーヴスに似た雰囲気を感じますね。寒いとことか。

もちろんミステリとしての完成度は素晴らしいです。果たして「堅牢きわまりない論理」かと言われると、まぁそうでもないんですが、細かな伏線は実にお見事。主人公が新聞記者、しかも地方紙の新聞記者であるため、あらゆる事件を取材しなければいけないのですが(それこそ地元のお祭りの事故から、殺人・放火まで何でもあり)、無関係そうに見える事件の数々がちょっとしたヒントになっているのが面白いですね。一種のモジュラー型だと言ってよいと思います。フロスト警部を思い出した方も多いのでは?

が、それだけでなく、『水時計』には独特な魅力があります。やはり登場人物でしょうかねぇ。特に主人公のドライデンのキャラ付けが秀逸で、これだけ「人間らしい」登場人物を読んだのは初めてな気がします。登場人物一人一人がまさに物語の中で生き生きとしており、それをさらっと描く、妙に斜に構えた作者の筆致がまた効果的。先程から地味地味と言っていますが、この地味な筆致こそが、『水時計』の魅力を最大限に発揮させる要因なんです。

というわけで、個人的には大当たりでした。これは続編が楽しみですよー。

書 名:水時計(2003)
著 者:ジム・ケリー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mケ-2-1
出版年:2009.9.11 初版

評価★★★★★
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