緋色の十字章
『緋色の十字章』マーティン・ウォーカー(創元推理文庫)

名物はフォアグラ、トリュフ、胡桃。風光明媚なフランスの小村で、長閑な村を揺るがす大事件が発生する。戦功十字章を授与された英雄である老人が、腹部を裂かれ、胸にナチスの鉤十字を刻まれて殺害されたのだ。村でただひとりの警官にして警察署長のブルーノは、平穏な村を取り戻すべく初めての殺人事件の捜査に挑む!英国のベテランジャーナリストが描く、清新な警察ミステリ。(本書あらすじより)

面白かったです。なんか、こういうまったりした空気のミステリって好きですねー(とすると、自分はコージー好きなのか?いや、それは違うと思う)。

副題に「警察署長ブルーノ」とありますが、村に警察官はこの人しかいないので、警察ミステリとは言えないですね。ただ、私立探偵物として見ても、ぽろぽろ証拠が集まるだけで、最後に見つかったある証拠によりフーもホワイも一気に片付いてしまうので、本格ミステリですらありません。コージーミステリかと言われると、まぁ自分はコージーミステリを全然読んでいないので分かりませんが、おそらくそれに一番近いです。ちょっと違う気はしますが。だって、コージーだと思ってこの本を手に取る人って、ほとんどいないと思うんですよ。あえてジャンルを作るなら、「おフランスど田舎ミステリ」です(笑)


事件自体はなかなか興味深いものの、そこまで出来が良いかと言われるとちょっと微妙です。さっきも言いましたが、割と解決が呆気ないんですよ。犯人当てを期待されると困ります。前半で拘留される人物がいますが、こっちはなんかやっつけで終わっちゃうし。

この本の見せ所は、そんなもんじゃないんですよ。ずばり、舞台が「おフランスど田舎」である点が重要なのです。つまり、

1、田舎の人々が伸び伸びと生活し、料理をしたりやたらと密接なコミュニケーションとっていたりする様を楽しむ

というのが、まずあります。まぁこれは予想の範囲内です。村の人々はみんな知り合いで、キャラのたったいい人ばかり。主人公のブルーノの夕食は、その調理シーンも含めてほぼ毎晩描かれているんですよ。あぁ涎が垂れる……フレンチ美味しそう……。

ところがもう1つあります。

2、ブルーノが村を守るため、フランスの法律もEUの法律も超えた「正義」を実行するのを楽しむ

これです!これがこのミステリの面白いところ。
ブルーノは、所詮村に一人しかいない雇われお巡りです。そんな彼は、(7年しかいないくせに)誰よりもこの「サンドニ」という、あのサン=ドニ大聖堂とは何の関係もない村を愛しているのです。ナチスの鉤十字が胸に刻まれていることから、事件は政治性を帯びてしまいます。彼はヨーロッパ中の注目を浴びたことで混乱に陥った村に平和を取り戻そうと、村人との協力のもと、時には法を超えた判断でもって、村を救うため尽力するのです。こうした舞台装置のおかげで、物語は独特な余韻をもって終わるのです。

ま、あらすじに興味を持った方は読んでみるといいと思いますよ。オススメです。続編の翻訳が待ち遠しいぃぃぃぃ。

書 名:緋色の十字章(2008)
著 者:マーティン・ウォーカー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mウ-23-1
出版年:2011.11.11 初版

評価★★★★☆
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