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『おやすみなさい、ホームズさん』キャロル・ネルソン・ダグラス(創元推理文庫)

職を失いロンドンをさまよっていたペネロピーは、ふとしたことからアイリーン・アドラーという美女と知りあい、生活をともにすることになる。彼女は女優であり、オペラ歌手であり、そしてときには探偵でもあった。著名な宝石商から依頼されたマリー・アントワネットゆかりのダイヤモンド探しから、数年におよぶ壮大な冒険が始まる!名探偵ホームズに敬意をいだかせた唯一無二の女性を主役に据えた魅惑のシリーズ、ここに開幕。(本書あらすじより)

……えっと。まぁ、つまらないとは言いませんが……ってレベルでしょうかねぇ。面白くはなかったです。読める、という程度。

タイトルから分かる通り、「ボヘミアの醜聞」の名犯人、アイリーン・アドラーを主人公とした物語です。「ボヘミアの醜聞」に至るまで、アイリーンはどのような人生を送って来たのか?彼女が結婚したノートンとは何者か?ボヘミア王と一般人がいかなる事情でラブラブになったのか?てなことを、想像に想像を重ねた作者が描ききったわけです。まさにホームズ「正典」のスピンオフ。お話の途中で、『緋色の研究』や「ギリシャ語通訳」などとリンクしたりと、ファンをニヤリとさせる要素もあります。


……と書くといかにも面白そうなんですが、どうにも話に乗れないんです。その最大の原因は、おそらくあまりに話にまとまりがないせいだと思います。オスカー・ワイルドの十字架を探すだとか、誰かさんの遺言書について調べるだとか、様々なエピソードが挿入されますが、結局本筋とはほとんど関係ないんです。そりゃ、ちょっとは伏線になってたりするんですが、ほとんど意味なし。もちろん、これらはアイリーンの魅力を伝えるためのエピソードなんでしょう。どちらかと言えば、この作品は伝記に近いですね。こういう挿話を楽しめる人なら、この本は当たるはずです。

下巻ではいよいよ「ボヘミアの醜聞」と話が繋がって来ます……が、なぜだかあまり盛り上がりません。これは、アイリーンの友人であるペネロピーを語り手としている時点でしょうがないことではあるのですが、アイリーンの個人行動を描けないんですよ。タイトルの場面も、さらっと口頭で語られておしまい。というわけで、淡々とした話にならざるを得ません。


というわけで、つまらなくはないですが、ちょっと不満足でしたねー。扱っている題材がこれだけ面白いんですから、もう少し見せ方に工夫が欲しかったです。

ちなみに、おそらく作者はフェミニストでしょうね。なんか話の端々で、女性を持ち上げる発言が連呼されます。登場する男性も、いかにも身勝手な男性中心主義者か、ひたすら女性に尽くそうとする男性ばかり。別に自分としては、フェミニズムは良いと思ってますが、ここまで露骨に連呼されると……ちょっとイラッと来なくもないです(笑)

あと、自分はシャーロキアン(またはホームジアン)ではありませんが、正典の記述と矛盾したところがかなり多くあったように思います。最後にその説明がありますが……いやいや、それずるくない?

書 名:おやすみなさい、ホームズさん(1990)
著 者:キャロル・ネルソン・ダグラス
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mタ-3-1、Mタ-3-2
出版年:2011.11.25 初版

評価★★★☆☆
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