第二の銃声
『第二の銃声』アントニイ・バークリー(世界探偵小説全集)

探偵作家ジョン・ヒルヤードの邸で作家たちを集めて行われた殺人劇の最中、被害者役の人物が本物の死体となって発見された。殺されたのは放蕩な生活で知られる名うてのプレイボーイ、パーティには彼の死を願う人物がそろっていた。事件の状況から窮地に立たされたピンカートン氏は、その嫌疑をはらすため友人の探偵シェリンガムに助けを求めた。錯綜する証言と二発の銃声の謎、二転三転する論証の末にシェリンガムがたどりついた驚くべき真相とは。緻密な論理性、巧みな人物描写とブロットの妙。本格ミステリの可能性を追求しつづけたバークリーの黄金時代を代表する傑作。(本書あらすじより)

バークリー祭第3弾、最終回です。『第二の銃声』は『毒チョコ』の翌年に出た作品で、『毒チョコ』に勝るとも劣らないバークリーの最高傑作、との意見が多いですね。これを読んで、当分バークリーはおあずけです。ピカデリーも絹靴下も最上階もパニックも知ったこっちゃない。

なるほど、これは確かに傑作。フランシス・アイルズ名義『殺意』は未読ですが、だいぶそれに近くなっているという印象です。
これまで読んだバークリー作品は、『ジャンピング・ジェニイ』などが分かりやすいですが、基本謎ありき、というものばかりで、かなりパズル要素の強いものでした。唯一の例外が『試行錯誤』だと思いますが、心理的描写が多い方が間違いなくバークリーは良いものが書けるのでは、という気がします。

今作では(自分の嫌いな)シェリンガムは登場が真ん中あたりになってからで、活動もかなり地味です。いつもみたいにバカ騒ぎをしたりしないんですよ。この小説の主人公は、語り手であるシリル・ピンカートンという30代後半(推定)のおじさんです。人生真面目一本、近頃の若い女の子はちゃらくていかん、キスなんかしたこともないですよ汚らわしい、という愛すべきおっさんなのです。
殺人が起こるのは100ページくらいなのですが、とにかくこの100ページが秀逸。殺されることになるエリックというのはとにかく嫌なやつで、そいつがひたすら周囲の人間とどろどろな人間関係を築いていくわけですが、この描写がシリルの目を通すと面白いの何のって。

そして本作には、なんとヒロインが存在します。何だか普通にキャラクターとして可愛いですが、これが意外に重要な役割を果たします。ま、そういうのなくてもとにかく可愛いですけど。そもそも魅力的な女性がバークリー作品に登場するのって珍しいような気がします。悪女とか、キーキー声のおばさんとかばっかりですから。バークリーは女性不信だったという話がありますが、本当でしょうか。

例によって事件発生以後、特にシェンガム登場以後は、相変わらず安定のバークリー節です。どんでん返しの多用、ということでワンパターン化してしまうのがバークリーの問題だと思いますが、今作は最後に驚いたと言うより、なるほど、と感心しました。○○にトリックが仕掛けられているんだと思ってましたが、まさかそっちだったとは……『第二の銃声』というタイトルにも納得。


現時点でのバークリーベスト3は、『試行錯誤』『毒入りチョコレート事件』『第二の銃声』でいいでしょうか。4つしか読んでいませんが。とにかくこれはオススメです。

書 名:第二の銃声(1930)
著 者:アントニイ・バークリー
出版社:国書刊行会
    世界探偵小説全集 2
出版年:1994.11.25 1刷

評価★★★★★
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