判事への花束
『判事への花束』マージェリー・アリンガム(ポケミス)

故ジャコビイ・バーナバスが築き上げた権威ある出版社・バーナバス書房は、現在、彼の息子とその従兄弟達により運営されていた。そんな中、経営者の一人が行方不明になり、数日後死体となって発見される。彼らの友人である私立探偵アルバート・キャムピオンは、無実の男を救うべく真相を突き止めようと奔走するが……。20年前に忽然と消えた男の謎が重低音となり展開される本書は、乱歩も賞賛したアリンガムの代表作である。(TYあらすじ作成)

マージェリー・アリンガムは、黄金時代の英国女流推理作家のビッグ4の1人ですが、日本ではそれほどでも……という作家さんです。ちなみにビッグ4の残りはもちろん、クリスティ、セイヤーズ、そしてナイオ・マーシュです。90年代までは、クリスティ以外はほとんど紹介されていなかったわけですね。うーむ。

さて、『判事への花束』は、江戸川乱歩が1935年以降のベスト10において3位にあげたというものです(このランキングの『クロイドン発12時30分』が1934年だということは言いっこなし)。というわけで、期待が高まります。初アリンガムはどうなるか?


……結論。よく分かりません(笑)

確かに面白いんですが、何か全体的に中途半端な印象を受けます。例えば本格物として見ると、犯人が明らかになる過程とか、消失トリックとかが、何だか唐突であっけないし、終わらせ方は本格の域を外れたものです。法廷シーンが非常に多いですが、その幕切れはやはりあっけなくて、は?という感じ(こんな適当に終わらせる裁判があるか)。裁判にかけられた男を救うという点ではタイムリミット物のサスペンスのようですが、みんな楽観視しているので緊張感ゼロ。途中でキャムピオンは暗闇で容疑者と戦ったりと、ややハードボイルドのようでそんなことは全くなく。様々な個性的なキャラクターがぞろぞろ出て来ますが、深く描かれることもなく、探偵役のキャムピオンは個性に乏しいです。全体的に、何だか不完全燃焼なんです。

序盤中盤の流れは、黄金時代のミステリそのもので、これはまぁ可もなく不可もなくというか。容疑者たちはくせ者ぞろいですが、何となく嫌な人達ばかりで、あまり感情移入出来ないのが難点でしょう。例えばジーナですが、こんなにある意味女らしいキャラは正直うざったいです。唯一好感の持てるキャラがリッチーと、せいぜいミス・カーリーですが、まぁその辺は読んでお確かめ下さい。


と、散々な評価ですが、採点すると、めちゃめちゃのむちゃむちゃ甘めですが、星4つになってしまうんですよ。この作品は、最後の1章に尽きるんです。犯人はうやむやに明らかになり、法廷もうやむやに終わり、えー、という空気の中読者が読まされるこの章は……何と言うか、すっごく美しいんです。別段どんでん返しがあるわけでもありませんが、非常に印象深い終わり方をします。読んでコリンズの『月長石』を思い出す方が多いと思うのですが、まさにあの感じですね。


というわけで、えー、やっぱり大した作品じゃないのかなぁ(笑)あと誤植が大量にあるんですが、何とかなりませんかねぇ。一度なんか「キャムピオム」とかなってましたし。というか、登場人物一覧に「マクルービー」っていうのがいますけど、そもそもこれは「スクルービー」の間違いです。おいおい。

書 名:判事への花束(1936)
著 者:マージェリー・アリンガム
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 269
出版年:1956.7.31 初版
    1996.12.31 2版

評価★★★★☆
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