第三の銃弾[完全版]
『第三の銃弾[完全版]』カーター・ディクスン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

密室で射殺された元判事の死体の傍らには、拳銃を握りしめた青年がたたずんでいた。しかし、被害者を襲った凶弾は青年の銃から発射されたものではなかった……。この不可解で錯綜した事件に挑むマーキス大佐は、不可能犯罪の巨匠が創造したシリーズ探偵マーチ大佐のプロトタイプ。従来の簡約版では、エラリイ・クイーンのひとりフレデリック・ダネイにより大幅に削除されていた部分を、完全復元した待望のオリジナル版!(本書あらすじより)

おぉ、これは面白い。傑作とは言えなくとも、「佳作」という言葉がピッタリな作品です。まっとうな、正統的本格ミステリといったところでしょうか。


ところで突然話は変わりますが、今まで自分が読んできたカー/ディクスン作品はと言いますと、
『仮面劇場の殺人』(中学生の時、なぜ初めてこれを手に取ったんだろう……)『曲った蝶番』『連続殺人事件』(以上カー)『ユダの窓』『プレーグ・コートの殺人』『貴婦人として死す』(以上ディクスン)
という、何とも意味不明のラインナップです。つまり、『火刑法廷』も『皇帝のかぎ煙草入れ』も『帽子収集狂事件』も『三つの棺』も『白い僧院の殺人』も読んでないわけですよ。『ユダの窓』くらいですね、有名作は。
ということは、カーお得意、みたいによく言われる怪奇趣味とか、ファースとか、まぁそういうもんをまだ自分は到底つかみ切れていないわけです。ファースに関しては薄々分かって来ましたが。


なんて人にとっては、この作品、非常に読みやすいのではないでしょうか。

文庫版でサイズが解説込みで239ページですから、長めの中編といった分量です。そのためもあるでしょうが、怪奇とかファースとか、そういう要素が完全に排除されているんですよ。この点がカーファンにとっては物足りないのかもしれませんね(といってもこの作品は評判良いですが)。とにかく謎解きに終始するのですが、これがとっても面白いです。毎章新たな謎がたたみかけるように提示されるのですが、とにかく魅力的な謎でして、これが読者をぐいぐい引っ張っていくのです(ページ数が少ないおかげでもあるでしょうね)。そして最後にそれらが一気に解ける……うーん、これぞ本格ミステリ!と叫びたくなります。

例によって不可能犯罪でして、トリック自体がそこまで優れているというわけではありません。ただ、相当凝ったものになっていて、その見せ方・組み立て方が上手いです。特に、ベタではありますが、犯行に関して読者にある思い込みをさせておき、それをえいやっ、とひっくり返すのにはかなり感心しました。読んでいて目に浮かぶような犯行シーンには思わずワクワクするものがあります。この不可解な状況が起きた必然性がきちんと説明されているのも好印象。


タイトルが[完全版]となっているのは、まぁあらすじに書いてある通りで、解説にめちゃめちゃ詳しく載っているので説明は省きます。探偵役がロンドン警視庁警視監マーキス大佐である理由は、おそらく出版元が異なるからでしょう。このマーキス大佐なる人物がまたとっても面白いです。シリーズ化しなかったのはつくづく残念。
『カー短編全集2 妖魔の森の家』に含まれている中編版の「第三の銃弾」は、解説によると、かなり不完全なもののようです。いくら分量を少なくしたかったとはいえ、フレデリック・ダネイがいかにセンスがなかったかを如実に示すわけですね(こら)。


と、いうわけで、かなり満足な一冊でした。まあ、今年読んだベスト10に入るとか、そういうことはないでしょうが、そこそこの出来の黄金期の物を読みたいという方には調度良いのではないでしょうか。おすすめです。

書 名:第三の銃弾[完全版]
著 者:カーター・ディクスン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 6-11
出版年:2001.9.15 1刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/710-e9516045