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『荒涼館』チャールズ・ディケンズ(ちくま文庫)

エスタ。この、出生の謎をもつ美少女の語りを軸として展開する多彩な物語。その背景となる「ジャーンディス対ジャーンディス事件」とは何か?上流夫人の秘密とは?野心的な弁護士の策動、奇妙な慈善事業家、アヘン中毒の代書人、相次ぐ事件……。イギリス19世紀を代表する作家ディケンズが、小説の面白さのすべてを盛り込み、読者に息もつかせぬ興奮の世界をくりひろげる。(本書1巻あらすじより)

ななな、長かったーー!去年12月に、センター試験を前にして2巻でとめてしまったわけだから、えーと、1年近くかかってしまったことになります。おぉぉ……すごい達成感。褒めて褒めて。

さて、ディケンズの作品群の中で、『荒涼館』は後期の作品群に当たるようで、一般的にそこまで知名度が高い作品ではありません。が、どうやらディケンズファンの中にはこれが大好きだという人がぞろぞろいるようで、いわゆる隠れた傑作というやつにあたるようです。なお、ディケンズの完結した作品の中では推理小説的要素がかなり強い方の作品だという、ディケンズを読むにしてはかなり不純な動機から自分は手に取りました。ちなみにディケンズはベタに『クリスマス・キャロル』しか読んでいません。

そして『クリスマス・キャロル』しか読んでいないくせにこんなことを言うのはアレですが、おそらく『荒涼館』は、ディケンズの最高傑作の1つであることは間違いないと思います。これは面白い。とにかく面白いです。というか、面白いという褒め言葉以外、高尚な褒め言葉が似合わないのも確かですけど、とにかく「小説」としての魅力が存分に注ぎ込まれた、これぞ小説!という作品であると断言して良いと思います。


物語は大きく分けて、エスタという、ディケンズが大好きな孤児の語りによる章と、神の視点たる三人称、かつ現在形(これが何ともユーモラス)で描かれる章の2つに分かれます。舞台となるのは、「ジャーンディス対ジャーンディス事件」なる、いつまで経っても終わらず、そのせいで身を持ち崩した人が数限りなくいるという遺産相続の裁判、チェスニー・ウォールドのお屋敷に住むレスタ・デッドロック卿とその周辺の人物たちの様子、エスタとそのいとこたち、その保護者のジャーンディス氏たちの様子、の3つに(たぶん)分かれており、それらが関係しあったりしなかったりしながら結末に向けて突き進んでいきます。登場人物は50人以上おり、どいつもこいつも重要人物です(笑)一見何の関係もなさそうなこの人々ですが、物語の進行に伴い、実は親戚だった!実は友人だった!みたいな繋がりが次々に明らかになり、読む側としては、コイツかぁぁぁぁぁ!みたいなカタルシスを味わうのですが、これがもう楽しくてしょうがないんです。
しかも語り口がユーモラスなのでとっても読みやすい。特に三人称の方ですが、大真面目にばかばかしい様を描くもんだから、クスクス笑いが止まりません。ディケンズってこんなに楽しかったんですね。今までのイメージは、貧しい人々に焦点を当てた辛気臭いやつ、って感じでしたが、いやもうごめんなさい。

ただまぁ、話の規模が何しろでかいうえ、あらすじごときで収拾のつくようなもんでもないので、上手く説明出来ません。ディケンズの作品って、全部こういうとんでもないプロットを持っているんでしょうか。

ディケンズの物語はある意味深みがなく、登場人物はどいつもこいつもデフォルメされていてリアルさに欠け、彼らは登場してから退場するまで1つのキャラクターを演じるのみであり、物語は必ずご都合主義的な大団円に終わり、なんていうことらしいです。ま、確かにそうでしょうけど、やっぱり小説って、ストーリーありきじゃないですか。ぐだぐだ心理を語ったりするのもいいですが、基本はワクワクなストーリーが大事です。この精神を継いだジョン・アーヴィングは偉い。


さて、気になる探偵小説的要素についてですが。プロットの重層性などにミステリ要素を見出すことも可能ですが、主にその点がはっきりしてくるのは3巻後半からです。なるほど、これはまごうことなきミステリです。ちゃんと事件が起き、読者にミスリーディング(しかも二重)を与えつつ、探偵役が人々の前で謎を解く。うぅん、完璧じゃないですか。
探偵役はバケット警部で、彼は史上初人間味を持って描かれた警官だとも言われます。人づきあいが良く、誰とでも打ち解ける一方、油断なく周囲に目を配り、集められたデータから謎を解き、時には探偵の才能を持つ奥さんの協力もあり、推理の時は指を激しく動かす癖がある……どこからどう見ても名探偵キャラですね。というか、彼は事実名探偵ですよ。4巻の活躍とか、確かにこの人にはかなりの推理力があると思わされます。少なくともドーヴァー警部の100倍は名探偵です(笑)


と、いうわけで、ちょっと長いですが、文句なしに楽しめる1冊でした。これを機にディケンズを読んでいくべきでしょうかねぇ。

書 名:荒涼館(1852~1853)
著 者:チャールズ・ディケンズ
出版社:筑摩書房
    ちくま文庫 て-2-1、て-2-2、て-2-3、て-2-4
出版年:
 1巻 1989.2.28 1刷
 2巻 1989.3.28 1刷
 3巻 1989.4.25 1刷
 4巻 1989.5.30 1刷

評価★★★★★
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