三本の緑の小壜
『三本の緑の小壜』D・M・ディヴァイン(創元推理文庫)

英国北部のごく平凡な町で、13歳の少女ジャニスが姿を消した。捜索もむなしく、ジャニスはゴルフ場で全裸死体となって発見される。なぜほかの少女ではなく、ジャニスだけが毒牙にかかったのか?殺人鬼はこの町のどこに潜んでいるのか?町の診療所に勤める若き医師ケンダルが有力容疑者として浮上するが……。『厄災の紳士』『ウォリス家の殺人』などで各ミステリ・ベスト10を席巻した本格ミステリの巧手、期待の訳しおろし作!(本書あらすじより)

というわけで、東京創元社毎年恒例ディヴァインです。彼の長編は全部で13あり、その11番目にあたります。次に訳されるのは12番目らしい。この間訳された『災厄の紳士』は10番目、『ウォリス家の殺人』は没後出版で13番目です。後期の作品に集中しているのはなぜなんでしょ?

それはさておき、さてこの『三本の緑の小壜』、ぶっちゃけて言うと、今まで読んだ『悪魔はすぐそこに』『五番目のコード』『兄の殺人者』『ウォリス家の殺人』の中で、いっちばん微妙でした。えぇ、ホントに。決してつまらないわけではなく、読んでいる間は楽しくこれぞ本格!というべき作りであり、また非常に読みやすい一品です。どこぞのつまらん本格よかよっぽど良いです……が、相対的に、つまり彼の他の作品と比べると明らかに精彩を欠いています。まだ読んでいませんが、『ロイストン事件』『こわされた少年』『災厄の紳士』と比べてもそうなのではないでしょうか。それはなぜか?


最大の欠点は、ディヴァインの持ち味であるミスディレクションがほとんど機能していないことです。つまり、犯人が分かりやすいのですね。しかも動機も何だか予想がつきます。これは本格ミステリとしてはきついです。
もちろん、この作品を読んで、犯人が分からなかった、結末の悲しさにびっくりした、みたいな感想を持つ人も結構いるでしょうが、しかしまぁ、例えば『悪魔は』や『五番目』で見せた、これぞ本格ミステリ!というべき感動はここにはないのです。最後の最後まで別の人を犯人だとばかり読者は思い込み、犯人が明らかになる瞬間、ぬぉぉぉぉぉぉぉ!となる……あまり使いたい言葉ではありませんが、ディヴァインになら許せる、いわゆる「クリスティばり」の技巧こそ彼の持ち味ではないですか。

なお、それ以外の点については特に文句はありません。真相解明シーンまではグイグイ読ませます。登場人物は相変わらず魅力的ですね。特に13歳の少女アンは、あまり登場しませんが、何というかずるすぎるキャラクターです。どこか真っすぐでない、語り手の一人マンディは、この作品の大きな魅力の1つでしょう。ちなみにこの作品では、一人称で物語を進行させる人物が章ごとに変わります(シーリアの一人称はちときついかも)。前から思っているんですが、ディヴァインは三人称の方が向いていると思うんですけどねぇ……。
ディヴァインおなじみのラブロマンスも相変わらず。彼の作品では、最後の章で、必ず誰かと誰かがくっつきます。これはもう、確実と言っていいです(笑)


というわけで、個人的にディヴァインが大好きな作家であるだけに、ちと辛めの評価となってしまいました。とりあえず、ディヴァイン初読者は『悪魔は』『五番目』など、何でもいいですが、今作からとりかかるのは避けた方が無難でしょう。

書 名:三本の緑の小壜(1972)
著 者:D・M・ディヴァイン
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mテ-7-6
出版年:2011.10.31 初版

評価★★★☆☆
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