不思議を売る男
『不思議を売る男』ジェラルディン・マコーリアン(偕成社)

エイルサが図書館で出会ったその男は翌日から、エイルサの母親の古道具店ではたらくことになった。はじめは不審に思っていたエイルサ親子も、その男の商売のうまさに魅せられていく。というもの、男は、まことしやかにそれぞれの古道具の由来を客に語ってきかせ、客をその品物に夢中にさせるのだ。エイルサ親子も、客同様、その謎の男の話にひきこまれていく……。(本書あらすじより)

(2012.8.14 追記を書きました。読書感想文課題図書らしいですね笑)


この間「大人にもオススメな児童書」企画で紹介記事を書いて、急にまた読みたくなって、結局図書館から借りてきてしまいました。まぁ読みたくなった最大の原因は、本棚の偕成社文庫を整理していて、佐竹美保さんの挿絵を見て思い出したからですが。

それはともかく、ひっさびさに読みましたが、やっぱりこれ、めちゃくちゃ面白いですね!まさに現代のアラビアン・ナイト!(読んだことないけど)万人にオススメの、読書を楽しめる一冊です。
……というのはもちろんなんですが、やっぱり、子供の頃の方がワクワクして読めた気がします。見え見えの展開にも心を躍らせていたあの頃。うーん。
全体として見ると、やはり良く出来た作品だと思います。まだ本をそこまで読んでいない子供にとって、『不思議を売る男』は未知の世界を見せてくれるでしょうし、すれた大人にとっても、珠玉の一話一話を心から楽しめるのではないでしょうか。毎話、導入部分を飽きないように工夫を凝らしているのもいいですね。

今回特に感心したのは、一話毎に語り口を大きく変えているという点です。まぁこれは訳者さんの問題にもなってくるのかもしれませんが。例えば中国の昔話なら、いかにもな昔話風味の文章だし、海賊ものなら、やはりいかにもな海賊物風味で文章が綴られているんです。
それと、作者さんは、自分が書いている作品に浸って書いているなという印象を受けました。細かい描写がいちいちそれらしいんですよね。まるで、登場人物が体験している様子がそのまま読者に伝わってくるかのような。文章を書くのがとっても上手い人なんでしょう。

この面白さを2倍にも3倍にもしているのが、佐竹美保さんの挿絵です。佐竹さんの版画っぽい絵の持ち味が最大限に生かされていると思います。日本人にはなじみのない家具の絵を付けてくれるという必要もあるんでしょうけどね(ハープシコードとロールトップデスクが何かということを、確かこの本で知ったんだよなぁ)。個人的には、93ページのお皿の絵、「テーブル」の話の詩に付けられた一連の絵、137ページの船長の演奏の絵、172ページの橋の絵、189ページの女の子、207ページの渋すぎる警部さん、217ページの登場人物の顔(特にネビル・コスティック)、11章の表紙、「ベッド」の表紙を含めた挿絵全部(なんとホラーチックな感じが合ってることか!)などなど、いい感じのがたくさんありますが、何より素晴らしいのはもちろん!287ページの絵ですね。何このチャールズ叔父さんかっこよすぎるぅぅぅ!(アホか)

唯一ちょっと納得がいかないのが、結末でしょうか。あのー、当時小学生だった自分はこれが理解出来たはずなんですが、今読んでみると何だかよく分からないんです。結局、MMCとは何者だったのか?という疑問に対する答えが自分の頭の中でいまだ決着がついていません。きっとこうだぜ、という解釈をお持ちの方、ぜひ教えてくださいな。


以下、どうせなので、それぞれの短編の感想をのせます。

大時計[迷信の話]
最初のお話にして、作者の持ち味を出し切ったいい短編です。フィンバーの心情描写が読んでる側に直に伝わってくるようです。

寄せ木細工の文具箱[嘘つきの話]
当時はこれ、めちゃくちゃ怖かったんですよね。良く出来ていると思います。
ミステリ的にちょっと解説してみると、これはまさに「奇妙な味」物であるでしょう。まぁ、この作品の中の短篇って奇妙な味ばっかりな気もしますが、これは特にそれっぽいです。最後に擬音語を入れるというのが秀逸。この話は、苦手だけど結構好きです。

中国のお皿[大切なものの話]
中国昔話風。語り口調やセリフも何だか説話っぽいです。ありふれた展開ですが、こういう昔話にはありふれた感じこそが最大の魅力ですからね。

テーブル[大食漢の話]
詩。全然怖い内容じゃないのに、小学校の時に読んで死ぬほど怖かった、非常に思い入れのある話です。挿絵をふんだんに用いているのが良いですね。めちゃくちゃしょうもない詩ではありますが、読んでいて妙に惹かれるものがあります。

ハープシコード[誇りと信頼の話]
あぁこれ懐かしいなぁ!海賊物です。ブルーム船長がね、もうね、かっこよすぎ。ブルーム船長を本国へ連れ帰る船長も、ほんのチョイ役ですが、良い味を出しています。この手の話に子供は弱い。全体的に渋い雰囲気の漂う良作です。

傘立て[かんしゃくもちの話]
これも当時は怖かったな……。結局この田舎者はどうなったんでしょうか。いまいち明示されていないんですよね。死んだような気もするけど、捕まったような様子もあるし、そもそも突き落としたわけじゃないみたいだし。電車の中の様子を考えると、この人には同情せざるを得ない気もします。

鏡[虚栄心の話]
これまた当時は怖かったな……って、怖いのばっかり。サイコ物のようです。ユースタシアって名前がとってもいいですね。最後に母親のセリフを入れるところが、この話のミソでしょう。複雑な余韻を残す作品です。まぁ、お客さんを考えると、こういう感じに締めるべきなんですが。

ロールトップ・デスク[犯人探しの話]
本格ミステリですが、ユーモア風味強め。これを読んで楽しかったことから、自分がいかに幼い時からミステリに目覚める素質を持っていたかが分かります。まぁミステリとして評価すると、誰だって犯人が分かってしまうんですが。巡査部長との掛け合いがひたすら笑いを誘うユーモアミステリです。話が終わった後の警官の「いかにも捜査課にありそうな話だな。」というセリフがこれまた面白いです。

木彫りのチェスト[いつわりの話]
キリスト教話&恋愛ものです。この本の中で唯一微妙かな、という短編。まぁ、キリスト教文化圏にいない我々ジャパニースにはなかなか理解しにくい話なのかもしれません。ただそれを差し引いても、展開が雑かなという気がします。おまけに、お客さんとの関連もちょっといい加減なんですよね。どうも全体的に手抜き感を感じます。

鉛の兵隊[誇りの話]
傑作!!!
読み終わって目頭が熱くなりますよ、これは。しかもこの話、感動ものではないというところがポイント。あくまで、そう、「誇りの話」なんです。父子どちらも、自らの信念に従ったのであり、間違ってはいないというところも深みを感じます。最後の方は心情描写を一切排除しているのも素晴らしい。いやーこれいいなぁ。
挿絵のチャールズ叔父さんが、ダンディでかっこよすぎ(笑)

ベッド[口にするのも恐ろしい話]
ホラー……ですけどね、ギャグですよこれは。何でこれ読んで昔は怖かったのかなぁ。挿絵のせいかなぁ。だって最後山から○○が出てくるんですよ。どんな展開だ。ま、これがある意味B級ホラーっぽくて良いのかもしれませんが。


というわけで、「木彫りのチェスト」以外はどれも面白いですよ。一番は何と言っても「鉛の兵隊」。この話だけ抜き出してどっかの短編集に収録するべきじゃないでしょうか。「ハープシコード」「寄せ木細工の文具箱」「鏡」「傘立て」あたりも良作。「テーブル」はある意味怪作です。

まぁぜひ、読んでみてくださいな。読書って楽しいんだよ!というMMCの想いが伝わる一冊です。

書 名:不思議を売る男(1988)
著 者:ジェラルディン・マコーリアン
出版社:偕成社
出版年:1998.6 1刷
    2001.9 8刷(日付は未記入)

評価★★★★☆




[追記]
ここ数日、『不思議を売る男』で検索してこのブログに来られる方が妙に多いので、気になって調べたら、なんと今年(平成24年)の読書感想文の課題図書になってたのですね。ははぁ。
個人的には、様々な種類のお話が収録されているため、感想文として非常に書きやすい作品だと思います。特に何かを感じた短編だけ取り上げりゃいいわけですし、また全体を通じて考察する要素も多いため、書きがいがあるのでは。小学校高学年らしいですが、その年齢も調度良いですね。あ、このページからコピペして良いですよ(笑)
って他の課題図書は読んでないんですけどね。この機会にぜひ読んでみて下さいな。
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