だれもがポオを愛していた
『だれもがポオを愛していた』平石貴樹(創元推理文庫)

諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく...。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。(本書あらすじより)

おぉぉぉぉぉ、これは面白い!今年読んだ国内ミステリでは、今んとこ一番面白いです。講義の先生が書いたミステリということで読んでみたんですが、いやいや、なかなかどうして。

まず一番大きな特徴は、これが「翻訳された」という設定であることでしょうね。アメリカで起きた連続殺人を、探偵役の更科丹希(ニッキ)が解決し、一緒に行動していたボルティモア市警察のナゲット・マクドナルド警部補が英語で物語を書き、それを日本のS・W教授が翻訳した、という設定なのです(凝ったことに、翻訳ものに必ず付いている、copyright云々のやつまで作ってあります)。そのせいか、文章・登場人物の会話やらが全て何となく翻訳体で、ところどころ訳注まで付いている始末。セリフにも「男(MANには〈犯人〉という意味もある)」みたいなのが出てきたり。舞台はボルティモア、登場人物は日系人が多いとはいえ、ほぼ外国人です。おかげで、翻訳物大好きなTYにはとっても読みやすかったです。

事件は見立て連続殺人ですが、あくまで本格物のゲーム性を追求しているためか、陰鬱な感じはまったくありません。ニッキの性格が非常に明るいせいもありますね。全編通して手掛かりが次から次へと出て来まして、読者はある程度は推理すると思いますが、これだけの手掛かりをまとめ上げるのはちょいと無理です(しかも予想した答えはほんのちょっとしか合っていなかったし)。読者への挑戦ののち、70ページにも及ぶ解決編を読むと、どんだけ伏線を張っていたんだと感心します。このあたりはクイーンを思わせますね。作者もクイーンが一番好きらしいですし(当人に伺いました)。

さらに、作者(というかS・W教授)独自の見解による「アッシャー家の崩壊」についてのエッセイがエピローグとして収録されています。これも面白いですね。いや、自分はアッシャー家をまだ読んでいないんですが……それでも楽しめます。読んだ人はもっと楽しめるでしょうが。ポーの作品に関する記述がちょいちょい出てきますが、読んだことのない人でも大丈夫だと思います。

もうひとつ特徴としてあげられるのが、ユーモアでしょうか。登場人物はやたらと気の利いた事を言い、訳者のS・W教授はちょいちょい訳注でふざけたことをいい(未成年にはみせーねん、って何だ)、何だかまさにアメリカ小説といった趣き。これまた読んでいて楽しかったです。


というわけで、久々に文句なしの本格推理小説でした。興味がある人はぜひどうぞ。


なお、作者・平石貴樹先生の講義に出ているのですが、21歳の女の子が主人公の話を書いたりするようには、こういっちゃなんですが到底見えません。いろいろなギャグセンスとかも含めて、印象と全く違う作風で、読んでいて不思議でしょうがありませんでした。まぁ、20年以上前に書かれたわけですが……。

書 名:だれもがポオを愛していた(1985)
著 者:平石貴樹
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mひ-2-1
出版年:1997.8.22 初版

評価★★★★★
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