カシタンカ・ねむい
『カシタンカ・ねむい 他七篇』チェーホフ(岩波文庫)

チェーホフの短編集。訳は、名訳者であり、チェーホフ研究家でもある神西清。いや、実際訳は本当に上手いです。感心しました。
収録作は以下の通り。各話のあらすじはちょっと省きます。

「嫁入り支度」(1883)
「かき」(1884)
「小波瀾」(1886)
「富籤」(1887)
「少年たち」(1887)
「カシタンカ」(1887)
「ねむい」(1888)
「大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ」(1893)
「アリアドナ」(1895)

おまけとして、神西清による「チェーホフの短篇について」(1936.5)、「チェーホフ序説」(1948.11)が100ページほど、娘の神西敦子が父を語る「父と翻訳」(2008.4)、川端香男里による神西清論「美しい日本語を求めて」(2008.4)が収録されています。

チェーホフを読むのは小学校の教科書で「カメレオン」を読んで以来ですねー。あれは面白かったです。いまだに登場人物名とか覚えてますからね、ウラジーミル・イワーヌイチとか。

一番面白かった……というか、衝撃的だったのは「嫁入り支度」で、次が「小波瀾」でしょうか。「嫁入り支度」は、何とも言えないわびしさの中に悲劇的な様相、ないしは、それが逆に喜劇的な様相をかもし出しつつ、何だかわからないあやふやな感じで話を進め、最後あのように終わらせるというのは、なかなか後味深いです。「小波瀾」は、そんなに評判の高い作品ではないのではと思いますが、少年の心の衝撃・恐怖の描き方が非常に秀逸だと思います。
「アリアドナ」はちょっとした中編ですが、何だかあまりのめりこめませんでしたね。「ねむい」は、ちょっと予想できてしまうとはいえかなりの衝撃。「大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ」と「カシタンカ」にはこれといった感想がありません。「富籤」は、何だかいつぞや読んだフリッツ・ライバー「冬の蠅」に似ていると思いました。なんとなくですが。「少年たち」は、おそらく作者が楽しんで描いた作品じゃないかと思います。

いずれの作品にせよ、人間感情を取り扱っていますが、後期に行くほどより大人の味になると言うのか、よく分からん作品が増えているように感じます。

……が、なかなかに読み応えがありながら読みやすく、チェーホフその人について極限まで迫ったと思われる名評論「チェーホフ序説」を読むと、結局のところ、チェーホフの作品には「非情」しかなく、それがただ様々に解釈されているだけだ、とあります。これはなかなか面白いですね。一通り読み終わった後、この評論を読めば、なかなか楽しめると思います(「チェーホフの短篇について」はちょっと退屈だったけど)。なんにせよ、神西清というのは大した人ですね。

一般的にチェーホフの有名作品とされているものが入っているわけではないのですが、まぁなかなか面白い作品集でした。人それぞれ、感じるところはあるのでしょう。海外文学の中では、チェーホフというのはかなり「日本的」なものに近いそうです。まぁ分かりませんが。個人的に日本文学はあまり好きではありませんが、チェーホフはかなり好きそうですね。

書 名:カシタンカ・ねむい 他七篇(1883~1895)
著 者:チェーホフ
出版社:岩波書房
    岩波文庫 赤623-5
出版年:2008.5.16 1刷
    2010.1.6 3刷

評価★★★☆☆
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