十角館の殺人
『十角館の殺人』綾辻行人(講談社NOVELS)

奇怪な四重殺人が起こった孤島を、ミステリ研のメンバー七人が訪れた時、十角館に連続殺人の罠は既に準備されていた。予告通り次々に殺される仲間。犯人はメンバーの一人か!?終幕近くのたった“一行”が未曽有の世界に読者を誘いこむ、島田荘司氏絶賛の本格推理。まだあった大トリック、比類なきこの香気!(本書あらすじより)

「大学生になったんだし主要な国内ミステリくらいは読んでみようぜ」企画第1弾です。この本に関しては作者の綾辻行人という名前と「館シリーズ」なる呼び方を聞いたことがあるくらいで、探偵役の名前すら知りません。

そしてよくよく考えてみると、本格的な孤島の連続殺人物って、『そして誰もいなくなった』(以下『そし誰』)と金田一少年ぐらいでしか読んでないわけですよ。さらに読んで思ったんですが、いやむしろ『そして誰もいなくなった』を読んだときにすら思ったんですが、こういういつ死人が出るか不安でしょうがないクローズドサークルでの連続殺人物って、読んでる側まで命の危険を感じるような気になって、心臓に悪いからちょっと苦手です。素直に探偵役の目線で読めればいいのに。この3日間どれだけ毒殺におびえたか、ってなのは冗談にしても。


で、感想ですが、いやまぁとにかくデビュー作とは思えない出来であるのは間違いないと思います。トリックもすれすれでかなり都合良く作者が話を進めているにしろ、良く出来ているんじゃないでしょうか。途中で何度となくもやもやっとすることはあっても、それをすっかり忘れさせてしまう文章力はさすが。ただトリックが大したもんである一方で、この話は不可能殺人とか謎とかで読者を引っ張っていくものでは決して無く、むしろ『そし誰』のようにサスペンスで引っ張る話だと思います。そのせいか、大トリックが明かされる一行では、ぶったまげるというより、「ほぉ~」と感心してしまった感の方が強いです(別にいいんだけど)。

そもそも作者が意図的にしていることだとは思うんですが、この『十角館』は『そし誰』をとっても喚起させるんですよね。読んだことのある人は、ついついそちらを考えてしまうはず。いいミスディレクションです。そしてあのラストに持って行くわけですからねぇ!この終わらせ方はかなり印象的です。

『そし誰』と比べるとどうしても意識せざるを得ないのが、登場人物の個性の弱さです。区別がつかないなんてことはもちろんないんですが、人物造形はもっとはっきりさせた方がいいかなという気がします。それを考えると、あれだけの人間を動かせるクリスティは本当にすごいとしか言いようがないですね。
もう一つ頑張ってほしかったのが、半年前の事件の真相です。あれがもっと現在に絡まり合い、なおかつもう一ひねりある真相だったらなお良かったかなぁと。いや、ワガママです。

ちなみに登場するミス研の面々は互いをエラリィとかカーとかポゥとかヴァンとかルルゥとかアガサとかオルツィとかと呼び合っています。いやいや、なぜそこでオルツィなんだろう、女性が3人いるなら別に良いけど、まずはドロシーだろ、と思ったんですが、この本が出た1987年はまだセイヤーズの知名度がそんなに高くなかったのかも。なるほど
ちなみにネット上の感想を見ていると、登場人物の訳分からんカタカナの名前が覚えにくいという文句が結構多いですね。これくらいの作家は知っていてほしいんだけどなぁ。むしろ自分はカタカナのおかげで覚えやすかった、というのは内緒。

書 名:十角館の殺人(1987)
著 者:綾辻行人
出版社:講談社
    講談社NOVELS アl-01
出版年:1987.9.5 1刷
    1991.4.26 12刷

評価★★★★☆


〔追記〕ネタバレ注意!!

































〔追記〕ネタバレ注意!!(白字です)

読み返してみると、けっこう作者は手がかりを入れてたんだなぁ、ということにいまさら気付きました。
1つ目はタバコですね。あの人とあの人が吸っているのは同じ銘柄です(割と序盤に書かれています)。
2つ目は、これは果たして手がかりと呼べるのかは分かりませんが、守須の住んでいるマンション名「巽ハイツ」、及び現十角館管理者の名字です。気付って方が無理ですが。

この小説ですが、実は1つだけ気にくわないことがあります。この結末の後、犯人がどうするのか知りませんが、正直自首しない可能性もあると思います。そうなった場合、エラリィの扱いは可哀想すぎるんじゃないですか?家族もいるわけですし……。こういう、もやもやが残るというのは、個人的にはあまりいただけません。
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