雲なす証言
『雲なす証言』ドロシー・L・セイヤーズ(創元推理文庫)

バターシー事件解決後、海外で気分転換をはかっていたピーター・ウィムジイ卿のもとに、驚くべき知らせが舞いこんだ。現デンヴァー公爵である兄のジェラルドが、殺人容疑で逮捕されたというのだ。おまけに、あろうことか被害者は妹メアリの婚約者。お家の大事にピーター卿は悲劇の舞台、リドルズデール荘へと駆けつけたが、待っていたのは、家族の証言すら信じることができない雲を掴むような事件の状況と、思いがけない冒険の数々だった……! 兄の無実を証明すべく東奔西走するピーター卿の活躍。活気に満ちた物語が展開するシリーズ第二長編。(本書あらすじより)

借り物本読書第二弾。セイヤーズはほぼ2年ぶりですね。今回は飛ばしてしまっていた長編2作目です。
あらすじを見れば分かるように、今作では貴族社会、というのがキーポイントになっています。いや正直、2作目ということで、「貴族探偵」たるピーターのキャラ付け&読者の興味を引く、という目的のもと、こういう話になったんじゃないかなという気がします。ちょっと偏見ではありますけど、イギリス人の貴族社会の醜聞好きってすごいらしいじゃないですか(たぶん)。
『雲なす証言』というタイトルは、ほとんど証言に頼って進行する事件の捜査と、最後の法廷シーンを表しているんでしょうか。

読んで思ったんですが、やっぱりセイヤーズには本格推理を期待するべきじゃないのかもしれませんね。例えば(ネタバレとは言えないけど、気にする人はこの段落を飛ばして下さいな、一応白文字にしておきます)トリック・プロットに期待して読むならば、この事件、必ず最後にもうひとひねり来るはず、じゃないですか。ちょっと肩すかしで終わってしまった感があります。ある意味せこい。そういや冒頭の誰が何時に家の中を歩き回って……ってのは何だったんだい。

とすると、この本の読み所はどこにあるのか、と言えば、やっぱりピーター卿およびその周辺人物の動きを楽しむことにあるのかな、という気がします。実際、結構読んでて楽しいんですよ。前から思ってますけど、デンヴァー先代后妃とか、もうひたすら楽しい人じゃないですか。パーカーもそろそろ恋が芽生えてきたし。バンターは特に大活躍だし。面白いことは面白いんですが、ミステリであるならば、ううん、こういう言い方はあまり好きじゃないんですが、一種のキャラ物小説として終わってしまったかな、という印象があります。もっとも、第一作目より格段に文章力が増していることも確か。だからこそ、これだけ楽しく読めるわけですけどね。評価は、面白かったけど、これから読む作品への期待と『ナイン・テイラーズ』の完成度を考えて、ちょっと辛めにつけました。

ちなみに、これは余計な想像ですけど、本書の出版された2年前に、作者セイヤーズは男性関係でこっぴどい目にあったようです……これはやっぱり、グライムソープに反映されているのかなぁ。

それと創元社さん、4ページに載ってるタイトルの英語表記、つづりが間違ってますよー。

書 名:雲なす証言(1926)
著 者:ドロシー・L・セイヤーズ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mセ-1-3
出版年:1994.4.22 初版

評価★★★☆☆
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