愛おしい骨
『愛おしい骨』キャロル・オコンネル(創元推理文庫)

十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。家政婦ハンナに乞われ二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、偏執的に保たれた家だった。夜明けに何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつずつ置いてゆく。一見変わりなく元気そうな父は、眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。これだけの年月を経て、いったい何が起きているのか?半ば強制的に保安官の捜査に協力させられたオーレンの前に、町の人々の秘められた顔が、次第に明らかになってゆく。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。『クリスマスに少女は還る』の著者渾身の大作。(本書あらすじより)


うぅぅぅぅぅぅぅぅむ、こいつは困った。
そもそもまず、TYはこういうミステリを普通読みません。こういうミステリってのは、アメリカ人作家による、なんかひたすら重苦しく、小さな閉鎖的な町での嫌らしい人間関係が延々と描かれ、ガチな本格なんかでは全然ないミステリです。うちに借り物としてあったので、まぁ話題作ということで読んだ次第。ちなみにキャロル・オコンネルは初めて読んだわけで、かの有名な『クリスマスに少女は還る』はノータッチです。

……で、結論。客観的には傑作に当たるかもしれません。主観的には、好みと全く会わなかった、としか言いようがないですね。好き嫌いの大きく別れそうな作品です。面白かった方には申し訳ありませんが、こればっかりは仕方がありません。


まず良い点をあげます。いくら好みに合わないとはいえ、少なくともこの作家は、文章力は相当ある人でしょう。細切れに場面転換が行われますが、これが結構独特な切り方で、作品の雰囲気の形成に一役買っています。ここぞとばかりて話を切るため、おいこら続きはどーなるんだ、というリーダビリティはあると思います。

また、プロットがかなり綿密で、真相そのものは非常に複雑です。登場人物(これが意外に少ない)それぞれの物語が、ラスト100ページで上手く絡み合うのは感心しました。はっきり明示することなく、読者に真相を気付かせるこの筆致は、なかなか上手いと思います。


続いて難点をいくつか(あくまで個人的な意見です、あしからず)。

まず、終始作者は話をぼかそうとしています。例えば、場面ごとに誰かの物語を一人称的に追っていますが、その誰かの考えていることはこの上なくあいまいに描かれ、なおかつ相手の考えていることは一人称である以上分からない、としています。登場人物は、主人公や故人を含めて、全員何を考えているのかさっぱり分からず、信用のおける人が一人もいません。このため、作品には独特で幻想的な空気が漂っています。
これの何が悪いかって、読者が登場人物に感情移入しにくくなるんですよ。誰ひとりとして、純粋な好感情を持てません(それを狙っているのかもしれないけど)。スーパー超人こと家政婦のハンナ・ライスは、お気に入りの人ではあるんですが、やっぱりどこかうさん臭い。これがいけ好かない。

それから、500ページ分という、ちょっと長めの尺で話を描いた理由が、よく分かりません。あいまいな人物描写の中から人物像を浮かび上がらせるため長めになったんだと思いますが、気になって先を読ませる展開ではあるものの、どこかペースに乗れませんでした。人によっては単調だと感じるかも。最後まであまりのめり込めずに終わってしまった感があります。

さらに、ミステリとして見ると、いくらなんでも最後の真相は唐突だろうと思います。あの人が犯人であり、動機がああである必然性はあるんでしょうか。○○○○○○の小道具としての使い方は上手いと思いましたが、だったらよけい、犯人が誰でもいいことになってしまう気がします。


……というわけで、いろいろ不満はあるんですが、しかしまぁ、好きになれなかったとはいえ、やはりよく出来た作品ではあると思います(だから星3つで落ち着いたわけで)。読む人それぞれで判断を下せばいいんじゃないですかねぇ。本って、そういうもんじゃないですか。


最後に一つ、気に入ったセリフを引用します。

「……わたしは本当に利口な神は無神論者だろうと言ったの。完璧でありつづける重圧をほしがる人なんていないでしょう?わたしはときどき一杯やるような創造主のほうが好きだわ。話しやすい人がいいわね。」


書 名:愛おしい骨(2008)
著 者:キャロル・オコンネル
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mオ-4-8
出版年:2010.9.17 初版

評価★★★☆☆
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