家蠅とカナリア
『家蝿とカナリア』ヘレン・マクロイ(創元推理文庫)

精神分析学者のベイジル・ウィリングは、魅惑的な主演女優から公演初日に招かれた。だが、劇場周辺では奇妙な出来事が相次ぐ。刃物研磨店に押し入りながら、なにも盗らずに籠からカナリアを解放していった夜盗。謎の人影が落とした台本。紛失した外科用メス。不吉な予感が兆すなか、観客の面前でなしとげられた大胆不敵な兇行!緻密な計画殺人にたいして、ベイジルが鮮やかな推理を披露する。一匹の家蝿と、一羽のカナリア――物語の劈頭、作者が投げつけた一対の手袋を、はたして貴方は受けとめられるか。大戦下の劇場に匂うがごとく描きだし多彩な演劇人を躍動させながら、純然たる犯人捜しの醍醐味を伝える謎解き小説の逸品。(本書あらすじより)


マクロイは2冊目。個人的には『幽霊の2/3』よりは断然面白かったですね(『幽霊~』は世評は高かったけど、個人的にはイマイチの極みだったんだよね……死体の数とかも無駄が多いし(笑))。非常にオーソドックスな本格小説で、まぁ地味っちゃ地味ですが、つまらないという印象はありません。プロットの出来はなかなかのものです。ちなみに一番意外だったのは、最初に死ぬだろうと思ってた人物が被害者じゃなかったことです(爆)


冒頭の序文からタイトルに至るまで「家蝿(いえばえ)とカナリア」の謎をアピールしまくっとります。読者への挑戦以外の何物でもないです(笑)……が、「家蝿とカナリア」の謎はそんなにすごくはなかったかなぁという気がします。というか全然感動しませんでしたね、ぶっちゃけた話。むしろ、あまりに多過ぎる伏線の数々の方が見物だったかなぁと。12章以降は伏線回収のオンパレードですよ(細かい所まで分からなくても、犯人が誰か読者はさすがに分かるんじゃないかなぁ)。

確かに「家蝿とカナリア」の謎を作者もプッシュしてますが、ここまで過剰な期待を読者がしてしまうのは邦題のせいのような気もします。原題は"Cue For Murder"(殺しへのきっかけ、ってとこ)で、シェークスピアのセリフのもじりですが、むしろこっちのタイトルの方が秀逸かなという気がします。地味だけど。


その他登場人物の描き分けがかなりよく出来ています。ハッチンズとラザラスが個人的にはお気に入りです(「~でやんす」ってどんな訳語だよ)。ありえないほど限定されているはずの容疑者ですが、読者視線では登場人物が決して限られることがないよう、上手く人物が配置されているかなと思います。


まぁ、傑作ではないし、カタストロフィを感じるほどの結末でもないですが(最後の犯人の扱いは散々でしょ)、じみ~な本格好きにはオススメですよ。


後書きは「黄金時代に属しながらも他作家と一線を画す特徴を持つヘレン・マクロイ」について。本格作家の変化について述べています。


書 名:家蝿とカナリア(1942)
著 者:ヘレン・マクロイ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mマ-12-2
出版年:2002.9.27 初版

評価★★★★☆
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