『猿来たりなば』エリザベス・フェラーズ(創元推理文庫)
猿来たりなば

ゆるやかな丘の広がるダウンズ地方の片田舎、イースト・リート。異邦人からの助けを求める手紙に応え、連続誘拐未遂事件を解決するため、トビーとジョージはロンドンから遠く離れたこの地まで遠路はるばるやってきたのだ。だが、想像以上の寒村で彼らが出くわしたのは、前代未聞の誘拐殺害事件であった。たしかに、嫉妬に遺産に保険金と、動機にも容疑者にも困らない状況なのだが、誘拐されて死体となって見つかったのは、なんと、チンパンジーだったのだ!英国ミステリを代表する作家の一人、エリザべス・フェラーズ初期の傑作本格ミステリ。(本書あらすじより)


レビュー書くの一ヶ月ぶりやな……。
初フェラーズです。こういう本を紹介してくれる創元推理文庫はやっぱり素晴らしいですね。訳(中村有希さん)とタイトルがまたおしゃれでいいんだよね。

一応紹介しておくと、エリザベス・フェラーズはイギリス黄金時代末期(1940年)に登場したイギリスミステリ界ボス級キャラの一人。であるにも関わらず紹介がありえないほど遅れている、というのが定番のご説明。
1998年に本書が訳されるまではポケミスから2冊のみであり、現在はもう少し紹介が進んでいます(創元から6冊と別の所から1冊)。


本書のメインは「チンパンジー殺人事件」なわけですが、かなーりきっちりした本格物です。なぜチンパンジーが殺されたのか?というバカバカしいネタではありますが、別にユーモアミステリなわけではありません。いたってちゃんとした、いかにもイギリス的な、かなりの水準の本格物です。

登場人物というのがまためんどくさい人ばっかりなんですが、くどすぎない味付けで、いやなやつばっかりなのに好感が持てます。キャラ配置的に特に良かったのは牧師さんでしょうか。


最後のトビーの解決シーンは、非常に分かりやすく的確で良かったですね。チンパンジーがなぜ殺されたのか……うぅむ、散々ヒントがあったのに気付かなかった自分が悲しすぎる。ある人物の行動を犯人である理由の一つとしていまして、個人的にはここに一番うならされました。伏線は十分過ぎるほどありますが、その隠し方がなかなかのもんです。最後の罠、まさにコロンボですが、これもまた良いですね。だからといって殺したのが誰かはまだ決まらない気がしないでもないですが。

なんにも気付かなかった自分ですが、ある人物の行動は分かってしまいました。○○が○○されていなかった理由とか、ということは○○の○○○が実はあの人なんじゃないかな、とか。じゃあなぜ真相が分からなかったんだろう(笑)


このトビー&ジョージのシリーズは本格時代への一種のパスティーシュの面があるといいます。語り手のトビーはいわゆる"迷"探偵の部類であり、散々外した推理をしますが、表立って調査をしたり真相を語ったりするのはもっぱら彼の役目です。一方、裏主役とも言える目立ちたがらないジョージが実はかなりの切れ者で、実質的に謎を解くのは彼の仕事です。この両者の関係がなかなか面白いですね。語り手がワトソンだと考えると、ある意味原点にかえっているとも言えるわけですが。ジョージみたいなキャラは大好きです。


というわけで、高水準の傑作でした。本格好きには結構オススメです。


書 名:猿来たりなば(1942)
著 者:エリザベス・フェラーズ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mフ-13 1
出版年:1998.9.25 初版

評価★★★★☆
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