セイレーンは死の歌をうたう
『セイレーンは死の歌をうたう』サラ・コードウェル(ハヤカワポケミス)

リンカーズ・イン法曹学院の弁護士カントリップは、あきれてものも言えなかった。信託の運用をまかされていた一流の受託人グループが、九百万ポンドもの信託財産の相続人の名前を紛失してしまうとは。問題の信託は税金対策のためチャネル諸島に設置されており、相続人の名前は五人の受託人のうち弁護士のグリンしか知らなかった。ところがグリンは、別の信託の会合でケイマン諸島を訪れたさい、謎めいた溺死をとげてしまったのである。あわてた受託人の面々はチャネル諸島で会合を開き、助言を求めてカントリップを招いた。だが、ロンドンに陣取ったテイマー教授と若手弁護士たちがカントリップの送ってくるテレックスで事態の推移を刻一刻と見守るなか、またしても事故が……。信託メンバーをつぎつぎと襲う不可解な死の謎を、テイマー教授がテレックスで送られてくる情報をもとに鮮やかに解き明かす。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞作。(本書あらすじより)


うぅむ、これは買いっすな。前に読んだ『女占い師はなぜ死んでゆく』も最高でしたが、こいつは同レベルか、それ以上でしょう。自分も見つけ次第手元に置かないとなぁ。

この間も思いましたが、サラ・コードウェルは手紙文の使い方がめちゃめちゃ上手いんですよ。前半は逐一送られてくるテレックスを元にテイマー教授が推理していくわけですが、全く飽きさせない筆の運び方なんですよね。
で、後半は明らかに全てを把握しきれていない関係者間をテイマー教授が飛び回ります。この「知ってる」⇔「知らない」の関係者の線引きがまた上手。プロットの立て方とはかくあるべしというところ。

このプロットに加え、コードウェルお得意のユーモアが(文字通り)炸裂するわけです。真面目ぶった笑いもあれば、頭からバケツを被るといった文字通りのギャグまで種々雑多。いえ、別にコメディ小説なわけではありませんよ。


さらにミステリ部分が個人的にかなり感心しました。抜き出して見れば大したことない真相です(というか冒頭でテイマー教授自身が「出版に価するほどの重要性があるとは到底言い難い」と言ってますし、読み終わってみれば実にそうだなと感じるわけで)。しかし(冒頭で言っているように)論理性という面ではなかなかのものではないでしょうか。気付くかどうかはともかくヒントもしっかり書かれており、推理が非常に心地いいです。
個人的にぐぅと感じたのは、やはり決め手の証拠でしょうか。ややいきなり感があるとは言え、なるほどなと思いました。
……が、一番すっげぇと思ったのは、例のテイマー教授の深遠な推理なのでした(笑)ここまで持ってきて、言われて見ればその通りですよね(とか紹介されてみた人が読んでみると、期待し過ぎててそれほどに感じないことがままありますから、まぁみなさん期待しないで下さいな)。

誤解して欲しくないんですが、本書は伏線バリバリなぜ君は分からなかったざまぁみろミステリではありません(いや、そういうの大好きだけどさ)。興味を持った方はぜひどうぞ。少なくとも、ユーモア本格ミステリ好きなら問題ないはず……たぶん。

ちなみにややめんどくさい法律用語が出て来ますが、読み飛ばさない程度に軽くは理解しながら読むことをオススメします。分からないと困るというよりは、分かった方が楽しめるはずですので。



ところで、前2作の方がミステリとしての完成度が高いらしいじゃないですか。ぐぬぬぬぬ、来年待ってろ。



書 名:セイレーンは死の歌をうたう(1989)
著 者:サラ・コードウェル
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1575
出版年:1991.9.15 初版

評価★★★★★
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