自宅にて急逝
『自宅にて急逝』クリスチアナ・ブランド(ハヤカワポケミス)

白鳥の湖邸と呼ばれる富豪サー・リチャードの豪勢な邸では、亡妻セラフィタを記念してのハウスパーティが例年通り開かれようとして、親族の者が続々と集まってきていた。表面はいかにも和気藹々の家族懇親会だが、どこか不気味な暗流が、最初から底を流れていたのだ……。そして一夜明けた朝、白鳥の湖邸の離れ家で、老卿はものいわぬ骸となって発見された。へロンズフォード署の老練警部―─ケントの鬼といわれ、この一族とは個人的に何十年来の付き合いのあるコックリル警部が招かれ、捜査を開始したが、事件は以外に手ごわかった。その日屋敷にいた人々の全てが、大なり小なりの動機を持っていた。妾から直った正妻のベラは遺産の配分に不満だったし、自称”精神異常者”の末孫をはじめ、孫たちもそれぞれ離婚問題や恋愛問題など、様々な厄介ごとを抱えていたのだ……。イギリス女流第一人者のブランドが、お馴染の状況設定のうちに得意のウィットと皮肉を縦横に駆使して展開する、ユーモアあふれる本格ミステリ。(本書あらすじ改)


ポケミスのあらすじは長いのぉ。てなわけで初クリスチアナ・ブランドであります。

結論・むっちゃ好みでした。これは面白い。ブランドがんばって読まなきゃ。古いのに、訳も上手かったなぁ。小文字が大きいのが全然気にならなかったよ。邦題もいいし。


ストーリーとしては超単純。大きなお屋敷があり、頑固なじじいがおり、孫たちがおり、孫とじじいは喧嘩をし、じじいは遺言状を書き直すと言って引きこもり、翌朝には死体となり発見されます。まさに王道。おまけに足跡の密室ときています。まさに王道中の王道。

しかし他の作家と一線を画すのは、家族が疑心暗鬼に陥り、互いに疑い合うというこの特異な状況です。密室の謎を、みんなが勝手に解いては誰それだって犯人かもじゃん、と言い合うわけ。容疑者が母親と息子娘達ならさすがにリアリティがないわけですが、おばあさんと孫達だから、なんかありえるかもな展開なわけです。しかもしかも、家族は確かにお互い仲がすっごく良いから、まるで冗談みたいに罪をなすりつけあうんですよ。

しかしながら、TYとしてはこういうどろどろ展開は嫌いなのです。じゃ、なんで楽しめたのかというと、作者の技量ですよね。シリアスな場面に一級のユーモアと皮肉がふんだんに交っており、話にいやらしさが感じられないんですよ。ブランド以外が書いたのではダメだったでしょうね。ってか、長編としてもたないかな。

コックリル警部のシリーズではありますが、彼はあくまで進行役に過ぎず、主役はマーチ一家です。というわけで、あまり警部のキャラがつかめなかった気がします。まあ、これはしょうがないか……。


トリック自体は、そこまでのものではありません。第一の事件は、上手くいかない気もします。第二の事件の方が、ありきたりだけど上手く出来ていたかな。
しかしながら、やっぱりトリック重視で読む作品ではないでしょう。登場人物らが事件に対して意見していく様をいかに楽しむかがポイント。おすすめです。


ちなみに、いくらなんでもこの検視審問はいいかげんじゃありません?

書 名:自宅にて急逝(1947)
著 者:クリスチアナ・ブランド
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 492
出版年:1959.6.15 初版
    1990.12.31 3版

評価★★★★★
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