『冬そして夜』S・J・ローザン(創元推理文庫)

11月の深夜、警察署へ呼び出された私立探偵ビル・スミスは、甥のゲイリーと思わぬ再会を果たす。なぜニューヨークへ来たのか話さぬまま、再び姿を消した甥を捜すため、甥一家が住む町ワレンズタウンを訪れたビルと相棒のリディアは、アメリカン・フットボールの盛んな町が抱える歪みと醜聞に、否応なく直面するのだった。私立探偵小説シリーズ第8弾、MWA最優秀長編賞受賞作。(本書あらすじより)

以前紹介したローザンの最新作です。第8作、偶数なので、アメリカ人ビル・スミスが主人公。奇数では、リディア・チンという中国人女性が主人公で、主人公の一人称によって話は進みます。二人は一緒に捜査に当たっているんですが、どうも一人称じゃない方(偶数ならリディア)がかなり立派な人として描かれているような気がします。お互い、相手を尊敬しあっているってことなんでしょうね。

本格というよりはハードボイルドチックです。アメフト第一な街ってのはアメリカではたくさんあるらしく、映画「コーチ・カーター」を考えてくれるとわかりやすいです(あれはバスケだけど)。街の、アメフト部員ではないからというので虐げられている少年少女たちに読者が惹かれるような気がします。ホント、差別見たいのがあるんですね。ビックリしました。

まあまあ分厚いんですが、そんなことを気にせず一気に読める傑作です。久々に読みごたえのあるミステリを読んだ感じでしたね。ストーリーも、行きあったりばったりとはいえよく出来ているし、アメリカの社会への鋭い批判も垣間見えます。結末は、ハッピーエンドとはとても言えないんですが、それでもスッキリ終われるのは、がんばっている部員以外の少年少女の姿が本当にカッコいいからでしょうね。

登場人物では、街のサリバン刑事が異常にかっこいい。いやもうホントに。クールで融通がきかなそうで、ちょっと情に厚いところがすごくいいです。いいキャラすぎて、クリスティ的に犯人じゃないかと疑うくらい。…主人公こっちでもいいかもな。なんたって、ビル・スミスは大したことやったわけじゃあないし、すぐ殴るし、なんかよく分かんないし。ローザンは、主人公2人よりも、脇役の方が力を入れて描いているんじゃないでしょうか。

難点は、表紙です(笑)。これ、いまさら他の人が書くってことにはならないのかしらん。

おそらく今年は、評価★5つはこれで最後でしょう。ぜひお勧めしたい作品です。

書 名:冬そして夜
著 者:S・J・ローザン
出版社:東京創元社
      創元推理文庫 Mロ-3-8
発 行:2008.6. 初版発行

評価★★★★★
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