風が吹く時
『風が吹く時』シリル・ヘアー(ハヤカワポケミス)

素人音楽家たちによるマークシャア管弦楽団、シーズン最初のコンサートが何とか始まった。到着の遅れが心配されていたクラリネット奏者もぎりぎり間に合い、オルガン奏者の姿が見えなかったのも演奏曲目の順序を変更することで切り抜けた。いよいよプロのヴァイオリニスト、ルウシイ・カアレスを迎えて、メンデルスゾーンの協奏曲。が、ミス・カアレスを迎えに舞台をおりた指揮者のエヴァンズは、戻ってくると聴衆にミス・カアレスの死を告げた……。そして混乱の中、クラリネット吹きは消えてしまったのだ!建物の構造上、犯人が管弦楽団員のうちにいることは間違いない。やがて捜査が進むにつれ、楽団員の錯綜した人間関係と思惑が明るみに……。弁護士ペティグルウを探偵役に、イギリスの小さな地方都市で起こった殺人事件を、イギリス風ユーモアをまじえて描く、作者の代表作。(本書あらすじ改)


はっはっは、さすがは宇野利泰訳。文体が古い……というかぎごちないねぇ。職業人って、プロフェッショナルの訳かな。ワルソウって、ワルシャワだよな。そしてなんでみんな語尾が「……だぜ」か「……なんじゃ」か「……たまえ」なんだろう(いやほんと)。

というのは置いといて(実際、古い訳って悪くないもんだよ)。

シリル・ヘアーは初読ですが、地味~に面白かったです。最近の作品はまったく激しいのばっかで……なんてグチっぽい人にはぜひ。ポスト黄金期&イギリスクラシックのお手本みたい。基本警部の尋問メインで話が進むんですが、意外に読みやすいんですよね。全体に渡ってまさにミステリミステリしてます。

トリックに大きな感動があるわけではなく、普通に読んでいれば犯人は見当がついてしまうかもしれません。しかし、この最後に綺麗にまとまる感じが何とも言えないです。伏線として重要でないものまでさらっと拾ってくるのがなかなかかっこいいです。

シリル・ヘアーはユーモアの効かせ具合がうまいとよく目にします。うぅん、それはそうなんでしょうが、残念なことに、訳がちょっとブレーキかけちゃった感じですね。ただ、最後はめちゃくちゃ面白かったです。ペティグルウも気の毒に(笑)


てなわけで、全体的に非常に好印象なんですが、あえてちょっとケチをつけます。

まず、容疑者が楽団員のみ、とするところをもっとはっきりして欲しかったなぁと。そうじゃなきゃ、例のクラリネット吹きの重要性がいまいち働きません。詳しくは言えないんですけど……後でネタバレ感想付けときますか。

もうひとつ、こいつはかなりまずいんですが、犯人のある設定です。どうも作者の勘違いかと思われますが、ある一カ所のみ、犯人に関して矛盾した設定があります。おまけにこいつがメイントリックに結び付く結構大事なとこなんだわ。しかもTYが読んだ本には、ご丁寧にその部分に線まで引いてあって(笑)それとも誤訳なのかな?こいつも後でネタバレ感想付けときます。


ま、しかし、大目に見れないミスがあるとは言え、基本このおおらかな雰囲気を味わう小説ですから。気に入る人はきっと気に入ります。黄金期の本格好きにはぜひ。

書 名:風が吹く時(1949)
著 者:シリル・ヘアー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 178
出版年:1955.6.30 初版
    1983.9.30 2版

評価★★★☆☆


<以下、ネタバレ感想>
<※注意!!以下 ネタバレ感想>















最大のミスは、140ページにあります。ここによると、犯人は「楽器なら何でもこなす」という設定になされていますよね。

でもこれだと、最後の手がかり(エヴァンズのセリフ)が何の意味も持たなくなってしまいます。いくらなんでも誤訳とは思えないので、作者のミスでしょうか。かなり痛いミスですが……。

もうひとつ。これは別にミスというわけではありませんが、犯人が(建物の構造上)楽団員じゃなきゃいけないという設定をもう少し強調してほしかったです。そこのところがはっきりしないと、なぜ犯人がクラリネット吹きに化けなきゃいけなかったのか、意味が無くなります。
というか、犯人はちょっと変装もして、客席→楽屋→舞台、をいったりきたりしてますよね。これって、自由に移動出来たってことになりません?だとすると、TYが非常に感心した犯人の計画、全部不要になりますよね。偽のクラリネット吹きを演出する必要がないわけですから
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