『七回死んだ男』西澤保彦
『七回死んだ男』西澤保彦(講談社NOVELS)
幾度も繰り返される殺人。殺されるのはいつも渕上零治郎!?それは、現実の出来!!だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。時間の“反復落とし穴”に嵌まり込んだ久太郎が、祖父の命を救うべき孤軍奮闘するが……。奇想な時間の不条理を緻密な構成で第一級のミステリに描き上げた、著者会心の一作!(本書あらすじより)
今月は、受験反動だかなんだか知りませんが、よく本を読みます。いやいや、30冊とかじゃありませんから。10冊行けば、その月はいい方です。
他の読書系ブログで評判になっていたため、図書館から借りてきました。いやはやこれはすごい。作者の設定勝ちです。主人公は、月に数回一日を9回体験する現象に陥るという特異な体質を持っている、という設定からしてぶっとんでいます。そして、ループの毎周ごとに主人公が位置を変えることで少しずつ謎がほぐされていく快感が非常にたまらない。さらに、最後のどんでん返しに持ち込めるよう、ありえないほど計算されたミスリードを緻密に行っているんですね。その主人公のSF設定を根本に置きつつも、本格推理としての味付けも綿密で、きっちり論理的であるというのも魅力的。SF嫌いの自分ですが、これはかなり良かったと思います。むしろ、SFじゃないんです。というか、並大抵のプロットじゃないんですよ、こいつは。こういう計算ずくめの小説って大好き。
主人公の設定というのが説明しにくいので、そこらへんは手にとって最初の方をパラパラ読んでくださいませ。
久々に日本人作家の作品を読むと、読みやすいことにびっくりします。この作品は親族同士の「骨肉騒動」が描かれますが、老けた主人公の皮肉な視線により全く嫌らしさがありません。というか主人公は高1なのかよ(笑)彼のキャラクター性により、ユーモラスに仕上がっているんでしょうね。個性的な一家の様子が、手を変え品を変え面白おかしく描写されていく様はなかなか目を見張るものがあります。
他のレビューを見ると、主人公の恋愛面を強調しているものが多いですが、そこはどうだったのかなぁ、と思います。そんなに恋愛面強かったっけな?という感じ。むしろ、スパイスのようにピリッと加えられている、という印象です。このスパイスが、話を飽きさせないキーでもあるんですよね。
やや軽い系(量も少ない)なうえ、ミステリミステリしていないので、万人受けするでしょう。表紙とタイトルのシリアスさはどこへやら(むしろ、シリアスなのかなぁ、と思わせてしまうためマイナスポイント?)。お堅いものはダメ!という方にぜひ。
これ、買おうかなぁ。再読したくなると思うんだけど。そーいや、講談社NOVELS読むのって、初めてに近いかも。はやみねかおるをいくつか読んだだけ、かあ。ノベルスじゃなくて、ノベルズじゃん!というツッコミも忘れずに。
書 名:七回死んだ男(1995)
著 者:西澤保彦
出版社:講談社
講談社NOVELS ニG-03
出版年:1995.10.5 1刷
評価★★★★★
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