『乗客ナンバー23の消失』セバスチャン・フィツェック - 2018.06.18 Mon

『乗客ナンバー23の消失』セバスチャン・フィツェック(文藝春秋)
乗客の失踪が相次ぐ大西洋横断客船“海のスルタン”号。消えた妻子の行方を追うべく乗船した敏腕捜査官の前に現れる謎、謎、謎。錯綜する謎を解かないかぎり、ニューヨーク到着まで逃げ場はない。無数の謎をちりばめて、ドイツ屈指のベストセラー作家が驀進させる閉鎖空間サスペンス。(本書あらすじより)
最近全然更新できていなくてすみません。いや、書きたい気持ちはあるんですけど、時間がマジで……社会人きっつい……。
さて、『アイ・コレクター』以来のセバスチャン・フィツェックです。新本格好きもイケる、かなり攻めたサイコ・サスペンスの書き手、というイメージ。
全体的には結構楽しめました。骨子だけ抜き出せば案外無難な話を、味付けや彩りでサイコ感とサスペンス感を演出している、という印象。ただ、久々に「最後いらない」という感想を持ちました。こういうのはもういいよ……いや好みの問題だろうけど……。
かつて妻子を船で亡くした過去を持つ囮捜査官マルティンは、自暴自棄になり、自らの身を全く顧みない無茶な捜査を続けていました。そんな中、妻子の死亡事件に関係する情報を持つという電話を受け、彼は豪華客船〈海のスルタン〉号に乗り込むことになるのですが……。
閉鎖的な超豪華客船で繰り広げられるサスペンス。ぐいぐい読者を引っ張っていく様は『アイ・コレクター』よりはるかに上でしょう。先読み不可能な展開の連続、次々と起きる事件、ちらつく犯人の影とエグすぎる監禁描写(虫……)などなど、とりあえず読んでいて抜群に先が気にりますし、一切だれません。適度に意外な犯人も示され、サスペンスとしては合格点ではないでしょうか。主人公マルティンが、めちゃくちゃベタな「過去を引きずる巻き込まれ型中年捜査官」感全開で、もはや狙ってるとしか思えない、使い捨て主人公っぽさがあるのは気になるけど……。
で、いったん完結したのち、後書きを挟み、まさかのエピローグが待ち構えているのですが……こ、これいる?? 普通に後書き前の時の方が、満足感が高かった気がするんですけど……。エピローグでここまで評価が下がるのも珍しいです。このモヤモヤ感、新本格とかでよくあるやつだ……(叙述とかではなく)。
なんというか、読者を手玉に取れさえすれば何でもいいんだぜ、みたいなスタンスは、すごいとは思うんですよ。メタっぽい面白さとか含めて、これが魅力なのは分かります。分かりますが、明らか付けたし感が強すぎると、もうね、何も言えねぇよ……。
というわけで、フィツェックは気になる作家ではあるんですが、どうも自分の求めるのとは違う気がするんだよなぁ。ただでさえサイコさんは好きじゃないし。とりあえずは『治療島』『ラジオ・キラー』を読んでから、ということなんでしょうか。
原 題:Passagier 23 (2014)
書 名:乗客ナンバー23の消失
著 者:セバスチャン・フィツェック Sebastian Fitzek
訳 者:酒寄進一
出版社:文藝春秋
出版年:2018.03.30 1刷
評価★★★☆☆
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