刺青の殺人者
『刺青の殺人者』アンドレアス・グルーバー(創元推理文庫)

全身の骨が折られ、血が抜かれた若い女性の遺体が、ライプツィヒの貯水池で見つかった。娘の遺体を確認した母ミカエラは、犯人を捜し出し、姉と共に家出したままの妹娘を探し出そうとする。事件を担当する上級警部ヴァルターは、暴走するミカエラに手を焼きつつ調べを進める。一方ウィーンの弁護士エヴァリーンは、女性殺害の嫌疑をかけられた医師の弁護依頼を受けていた。『夏を殺す少女』続編。ドイツで爆発的な人気を博した話題作。(本書あらすじより)

いやー、ここ数年のグルーバーの中では一番良いんじゃないんですか? 『黒のクイーン』『月の夜は暗く』は、面白いけどもう一歩かな……というぐらいでしたが、今回は『夏を殺す少女』を読んだ時のように「いい! 面白い!」と素直に褒められる感じ。シリーズである前作『夏を殺す少女』とのつながりは一切ないし、そもそも前作の内容を完全に忘れていたけれど何の問題もありませんでした。

ドイツの警部とウィーンの弁護士がそれぞれ別々に事件を追い、最終的に1つのところに結びつく……というダブル主人公制のミステリ。『夏を殺す少女』もそうだった気がしますが、この2人が出会うのが結構な終盤で、そこまでの持っていき方が上手いのです。

連続殺人犯はもうかなりむちゃくちゃなサイコパスですが、躊躇なく殺しまくる最強っぷりが前面に出ていて悪くありません。正体については……まぁ意外と言えないこともない、くらい。私立探偵の調査、上級検察官の思惑など、いろいろとっ散らかったわりに、最終的にこじんまりとまとまった気はします。
あと、今回すっごい読みやすいんですよ。550ページあるのに長さが全く気になりませんでした。連続殺人物として真新しいことをやっているわけでもどんでん返しがあるわけでもないですが、やはりこのダブル主人公制が上手いから読ませるのかなぁと。
特に印象に残っているのが、被害者の母親ミカエラがひたすら暴走を繰り返し、それを上級警部ヴァルターが何とか止める、というヴァルターのパート。娘を思う母の気持ちが強いのはいいけど暴走して捜査の足を引っ張るのはちょっと……と最初は思っていましたが、ミカエラの行動が首尾一貫して突っ走っており、これはこれで非常に良いと思います。ある意味ウールリッチ。

というわけで、無難ながら大変良い出来の作品でした。アンドレアス・グルーバー、読み続けてもはや4作ですよ。
ところでなんでこんなにせっせとグルーバーを読んでいるのかと言えば、『夏を殺す少女』が意外性でもドラマ性でもとにかく抜きんでていた印象があるからなんですが、もはや印象だけでどういう内容なのかさっぱり思い出せないんですよね……再読してもいいのかも。

原 題:Racheherbst(2015)
書 名:刺青の殺人者
著 者:アンドレアス・グルーバー Andreas Gruber
訳 者:酒寄進一
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mク-19-4
出版年:2017.04.14 初版

評価★★★★☆
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