泥棒成金
『泥棒成金』デヴィッド・ドッヂ(ハヤカワ・ミステリ)

ロビーは二階の寝室から、闇に沈んだ庭を見下ろした。いつもと変わらぬ静かなニースの夜だ。が、彼の鋭い眼は、じっと息をひそめているいくつかの影を見逃さなかった。警察がついに彼を捕まえにやってきたのだ! しかし、今捕まるわけにはいかない─意を決したロビーは、テラスから一気に跳躍し、信じられない身軽さで木を伝うと、闇の中に姿を消した……。
かつて、その手口から“猫”とあだ名された宝石泥棒ジョン・ロビー。彼は一度捕えられたものの、戦時中のレジスタンス活動を認められて特赦となり、その後は足を洗って悠々自適の生活を送っていた。だが、今、彼は再び警察に追われていた。最近、”猫”とそっくり同じ手口の宝石盗難事件が相次ぎ、その嫌疑が彼にかけられたのだ。身に覚えはないものの、警察が彼の言葉を信じるはずがない。ロビーは、無実を証明するため、自分の手でにせ”猫”を捕えることを決意した。ちょうどカンヌには、アメリカの大金持、スティーヴンス夫人が滞在中だった。彼女の有名な宝石を狙って、にせ”猫”は必ず姿を現すに違いない――かくして、アメリカ人観光客に変装したロビーは、日増しに厳しくなる警察の追求の眼を逃れ、真夏のカンヌに乗り込んだ!
華やかな高級リゾート地カンヌに展開される息詰まる追跡劇。ヒッチコック映画化の傑作サスペンス。(本書あらすじより)

面白いらしいとは聞いていたのですが……こ、このやろう、マジで面白いじゃねーか……。
『地下室のメロディー』みたいな(それより10年は前だけど)、フランス(作者アメリカ人だけど)泥棒物(主人公は盗もうとしてないけど)シャレオツ犯罪小説という感じで、いやー面白かった! 昔のポケミスはこれだから侮れません。

第二次世界大戦前のフランスにおいて伝説的な泥棒『猫』であった主人公ジョン・ロビー。レジスタンス活動を経て、今ではすっかりフランスで悠悠自適の足を洗った生活を送っています。ところが再び『猫』と思われる泥棒が活動を再開。ジョンは自らの安寧な生活を守るため、偽物の『猫』を追い始めます。
かつての泥棒仲間と共に偽『猫』を追うジョン。しかしジョンの親友であった貴族や警察署長も、『猫』の活動再開を見てジョンが再び泥棒に戻ってしまったのかと勘違いし、ジョンと敵対してしまいます。果たしてジョンは『猫』を捕まえられるのか、そして偽『猫』の正体は……?というのが大まかなあらすじ。

主人公ジョン・ロビーは超良いやつなのですが、ラブコメの主人公並のにぶちんで、かつ「どうせ自分のことを説明しても理解されないし」と説明を放棄して親友と敵対してしまうという、どうしようもなく人付き合いが苦手な人です。『泥棒成金』は、泥棒の生き様と共に、友情を描いた物語でもあるんですよね。
登場人物それぞれの「存在の理由(レエゾン・デエトル)」が裏テーマとなっていて、金持ちの夫人の娘、妻を亡くした融通のきかない貴族、何より泥棒の世界と堅気の世界の狭間で生き方に悩む主人公が、ラスト各々の「存在の理由」を見出すことになります。もう、実にかっくいいのです。言っていいと思いますが、これぞ大団円!というエンディング。

そして元泥棒が泥棒を追うというメインのストーリーもなかなかの出来栄え。はっきり言って内容自体はかなりシンプルな中で、いろいろと出来事を重ねることによって長編としてしっかり作り上げているのは上手いなぁ。最後の登場人物を総動員した結末は見事という他ありません。

意外、とまではいかないけど偽『猫』の正体などもしっかり作ってあり、とにかくエンタメとして隙のない良作だと思います。HPB1500番の時に復刊されたようですが、これは文庫化するべきだたかも。映画も評判が良いですし(実際、映画化向きの内容だと思います)、機会があればそちらもぜひ観てみます。

原 題:To Catch a Thief(1952)
書 名:泥棒成金
著 者:デヴィッド・ドッヂ David Dodge
訳 者:田中融二
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 223
出版年:1995.11.30 1刷
     1987.12.31 4刷

評価★★★★☆
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