バサジャウンの影
『バサジャウンの影』ドロレス・レドンド(ハヤカワ・ミステリ)

スペイン、バスク地方のバスタン渓谷で、連続少女殺しが発生する。絞殺された少女たちは森の中で、裸身を晒して仰向けに横たわるポーズをとらされていた。州警察は地元出身の女性捜査官アマイアに捜査主任を命じる。迅速に捜査を進めるべく奮戦するアマイアだが、故郷に戻ったことで否応なしに、捨てたはずの自分の過去に直面し、公私ともに追い込まれてゆく。さらに死体発見現場では、バスク神話の精霊である大男バサジャウンの姿が目撃されていた……歴史と伝説に彩られた秘境を舞台に展開する、大型サスペンス。(本書あらすじより)

最近週1更新が板についてきました。こ、このペースだけは維持したいぞ。
さて今年のポケミスですが、スペイン版ピエール・ルメートルみたいな作品でした。どんでん返し的な意味ではなく、捜査官の親族が巻き込まれてしまうサイコ・サスペンスという意味で。それに加えてバサジャウンというスペインの伝説が関係する……というものです。
読む前は非常に面白そうだなと思ったのですが、う、うーん、これは久々に覇気のないポケミスを読んだなというか……。やりたいことを色々詰め込んだのは評価しますが、やるならちゃんと書いてほしいなというのが正直な気持ちです。

奇妙な状態で死体を残す少女連続殺人犯。死体はバスタン渓谷で発見されていた。女性捜査官アマイアはバスタン渓谷出身で地元に明るかったため、捜査主任として地元に舞い戻ることに。しかし故郷の家族内での軋轢、部下の刑事の不審な行動など問題が多発する一方で、次々と殺人は起き続け……。

この地方で目撃されるはずのない熊のような動物の痕跡が現場で発見されたことから、犯人はバサジャウン(雪男のような伝説上の怪物で森の守護者)ではないか?という話が序盤からちらほらと出ているのですが、主役のアマンダがそんなことはあり得ないとバッサリ切り捨てます。
……いや、それはいいんですよ。警察官がまともに伝説を扱ったら話が進みません。ただ、「バサジャウン」の出し方が物語全体を通じて雑というか。とりあえず伝説仕込んでみました、あとはまぁラストでね?みたいな。やるからには適当に出すのではなく、もっと存在を強調して欲しいのです。

で、物語の主軸はアマンダの家族内の問題、およびアマンダの部下の問題に収束していきます。連続殺人事件の被害者の家族などは、ちらっと登場しますが影が薄いです。登場人物がどいつもこいつも自己中なので非常につらい……。主人公のアマンダ含めて自己中なので、それはもうつらいのです。
人物描写について言えば、1ページだけ脇役の捜査官視点の家庭シーン入れるみたいな、意味のない視点変更も気になるっちゃ気になります。連続殺人を相手にしている捜査官が息抜きにピクニックに行っちゃうあたりはスペインまじ偉いと思いましたが、実際どうなんでしょう。

で、当然内輪の問題が殺人にも絡んでくるのですが、そこのミステリとしてのどんでん返しっぷりも甘いし、終わらせ方も慌ただしく感じました。いちおうミスリーディングもあって、もしこの通りに終わったら作者ぶっ飛ばしてやるぞと思っていたらさすがにそこまで単純ではなかったんですが、かといって意外かというとそんなこともないし。全然読者の期待と想像を超えてこないのです。

というわけで、凡庸なスリラーだったなという感想。別に読んでいてつまらないと感じるほどではないですが、面白いかと言うとそうでもないという……。3部作らしいですが、読むか迷うなぁ。
ちなみに翻訳ですが、「~じゃ」みたいな口調を最近のミステリで久々に見ました。全体的に大人向けというより児童向けの翻訳っぽさを感じたのですが、気のせいかな?

原 題:El guardián invisible(2013)
書 名:バサジャウンの影
著 者:ドロレス・レドンド Dolores Redondo
訳 者:白川貴子
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1914
出版年: 2016.12.15 1刷

評価★★☆☆☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1352-b952ed40