火の玉イモジェーヌ
『火の玉イモジェーヌ』シャルル・エクスブライヤ(ハヤカワ・ミステリ)

イモジェーヌ・マッカーサリー─しっかりとした骨格と、男のような態度と、赤毛の人間特有の白い皮膚をもった身長5フィート10インチの大女。ほんのわずかでも不恰好な肉がつかないように注意し、少しでも無駄な脂肪を見つけると、毎朝夢中になって体操するイモジェーヌは、女には珍しいほどの力持ちである。生粋のスコットランド人で、炎のような髪の持主イモジェーヌは曲ったことは大嫌いなたちで、その髪に似て猪突猛進型の大女だった。おまけに、スコットランド人以外は人間と思わないほど、母国スコットランドに対する情熱ははげしく、同僚からは、〈赤い牡牛〉と恐れられていた。同僚というのは海軍省情報局の人たちである。イモジェーヌは、そこのタイピストだったが、あろうことか、彼女の特異な性格が局長の目にとまり、女スパイに抜擢された! 局長はとくにイモジェーヌを名指し、新型ジェット機に関する極秘書類をある人物に運んでほしいと頼んだのだ。かくして大女のイモジェーヌはいたく感激、まっ赤な髪をふりかざし、女スパイとして堂々と乗り出すことになったのである……!
数々の失敗を重ねながら、イモジェーヌ、奇想天外の大活躍! フランス・ミステリ界の鬼才が放つ、女スパイ、イモジェーヌ・マッカーサリー・シリーズ第1弾!(本書あらすじより)

別につまらないってことはないんですが、エクスブライヤの他の作品と比べるとちょっとなぁ……という感じの作品でした。
『火の玉イモジェーヌ』は女スパイ、イモジェーヌ・マッカーサリー・シリーズの第一弾。只のタイピストだったイモジェーヌがスパイに大抜擢、しかしあっさり騙され勘違いで暴走するイモジェーヌはとんでもない活躍を見せることに……というお話です。

エクスブライヤって、ユーモア路線だとフランス外の国を舞台にすることが多いじゃないですか。『死体をどうぞ』はイタリア、『キャンティとコカコーラ』はイタリアとアメリカ、というように。で、特に『キャンティとコカコーラ』で顕著でしたが、舞台となるお国柄を強調した国民性ジョークが好きなようです。いちいち大げさでラテン気質丸出しなロメオ・タルキーニ警部とか。
今回の舞台はイギリス、主役のイモジェーヌはスコットランド気質丸出し、田舎感丸出しの強気な女性です。当然スコットランドとイングランドのお国柄の違いなんかをガンガン出したジョークが連発されるわけですよね。ところがそれが若干すべっているというか……。

まぁ何もかも予想通りに展開するユーモアスパイ小説……というかここまで来るとスパイパロディなのですが、後半のレディ・キラーズ並に敵を返り討ちにしていくイモジェーヌ(50歳の強気な赤毛のスコットランドおばさん)の活躍はなかなか楽しめました。どんどこ殺します(イモジェーヌが)。全然意外でも何でもないどんでん返しもありますが、この予定調和感も悪くはありません。

とはいえやっぱり、ユーモアミステリのド傑作『死体をどうぞ』や傑作ノワール本格『パコを憶えているか』、軽さが楽しい『キャンティとコカコーラ』と比べるとどうしても弱いかなぁ。初エクスブライヤには向かないと思います。

原 題:Ne vous fâchez pas, Imogène !(1959)
書 名:火の玉イモジェーヌ
著 者:シャルル・エクスブライヤ Charles Exbrayat
訳 者:荒川比呂志
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1003
出版年:1967.09.30 1刷

評価★★★☆☆
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