死はわが隣人
『死はわが隣人』コリン・デクスター(ハヤカワ・ミステリ文庫)

オックスフォード大学学寮長選挙のさなか、住宅地で殺人事件が発生。テムズ・バレイ警察のモーズ主任警部は、血の海に横たわる女の死の謎を追い始めた。一癖も二癖もある隣人たちの錯綜する証言から、やがて殺人事件と学寮長選挙との意外な関係が明らかに。だが、その矢先、モースは病に倒れた。苦痛に耐えながらたどり着いた、混迷の事件の真相とは? 現代本格ミステリの最高峰、モース主任警部シリーズついに佳境へ。(本書あらすじより)

デクスター追悼再読。最後は、デクスターで一番好きな作品で、マイ再読欲求度ナンバーワンの『死はわが隣人』です。これも高1以来なので9年以上ぶり。
もうね、この作品を楽しく再読できてしまうあたり、自分はモースの妄想推理とかどうでもいいんだなということがよく分かりました。キャラ萌えと言われようが何だろうが、『死はわが隣人』は最高なのです。

学寮長選挙をめぐる殺人事件自体は、中盤の転換が面白いとは言え全体的には薄味。モースの推理も大胆な仮設が登場するわけでもなく、結構いきあったりばったりに解決しているに近いです。トリックもまぁこんなもんだろうと。つまり本格としては並か、下手するとそれ以下かもしれません。少なくとも中期までのデクスターに及ばないことは確か。
ただ、コリン・デクスターといえば不倫によって事件が起きるわけですが(そのせいでイギリス人は基本的に浮気しているという理解が高校生の頃の自分の中に爆誕した)、まぁその頂点のような話なんですよね。学寮長候補2名とその妻の描き方がすごく好き。これも初期の頃には見られないキャラクターだと思います。

さらにモースとルイスという、実は今までその仲をきちんと描いていなかった2人の関係が、『死はわが隣人』でようやく示されるのです。モースとルイスのお互いに関する気持ちについて、内面に踏み込んだ描写がされたことがこれまであまりないんですよね。ところが今作、モースが糖尿病でガタガタになる中で、秘書(この人のエピソード好き)や上司であるストレンジ警視、シスター・マックイーンといった脇役の活躍によって、モースという人間がようやく描かれたという感じ。
だから何回読んでもラストには感動してしまいます。モースの身勝手さとルイスの人の良さが、知り合って15年くらいを経たシリーズの中でようやく噛み合うんですよ。モースのツンデレっぷりがやっと発揮されるわけですよ。だから、この作品が、シリーズの中で、一番好きなんです。

『死はわが隣人』という当初のシリーズ完結作が、このあと読者の要望によって『悔恨の日』という完結編へとつながっていくわけですが、『死はわが隣人』でモースとルイスの関係がきちんと描かれた後でないと『悔恨の日』は成り立たないんですよねぇ。とにかく、このシリーズの集大成のような作品なのは間違いないです。うーん大好きだ。追悼再読はこれで終わりにしますが、近いうちに『悔恨の日』も再読しましょう。

原 題:Death is My Neighbour(1996)
書 名:死はわが隣人
著 者:コリン・デクスター Colin Dexter
訳 者:大庭忠男
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 148-13
出版年:2001.12.15 1刷

評価★★★★★
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