ジェリコ街の女
『ジェリコ街の女』コリン・デクスター(ハヤカワ・ミステリ文庫)

モース警部がジェリコ街に住む女アンに出会ったのは、あるパーティの席上だった。すっかり意気投合した二人は再会を約すが、数ヵ月後、彼女は自宅で首吊り自殺を遂げた。はたして本当に自殺なのか? モースにはどうしても納得がいかなかった。やがてアンの家の近所で殺人事件が起こるにおよび、モースの頭脳はめまぐるしく動き始めた。前作に続き英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を連続受賞した傑作本格ミステリ。(本書あらすじより)

コリン・デクスター追悼再読第2弾。前回は初期の代表作だったので、今回は(デクスター好きにはおなじみ)中期の代表作『ジェリコ街の女』です。高1の冬以来なので9年ぶりですが、記憶通りめちゃくちゃ良い作品でした。うーん、実に素晴らしい。

まず『キドリントンから消えた娘』から続けて読んで感じたのですが、圧倒的に文章が上手くなっていますね。プロローグだけでも分かりますし、章頭の引用文のセンスも増しています。ちょっと突き放したような、皮肉とユーモアたっぷりの余裕のある文章となっていて、いかにもなデクスターっぽい雰囲気が完成したのかなと。
また、ミステリとしての作風も変化しています。『ウッドストック』から『死者たちの礼拝』までは、とにかく推理をこねくり回すタイプの試行錯誤推理が大きな特徴でした。ただその後の数作は、妄想推理をやや減らして、その分大ネタを仕込むようになっているのです。だからきっちりまとまっていてすごく程よく楽しめるんですよね。『ウッドストック』や『キドリントン』なんかよりよっぽどスタンダードでおすすめしやすい英国ミステリなのかなと思います。『ジェリコ街の女』とか、『謎まで三マイル』とか、『別館三号室の男』(これも再読したい)とか。
いやーしかし、トリックを忘れていたこともあり、今回も素で楽しめました。『ジェリコ街の女』のトリック自体は綱渡りすぎるから絶対上手く行かないだろうなとは思うのですが、それでも初読時はかなり驚いた記憶があります。この綱渡りっぷりをごまかすのがモースの妄想推理でもあるわけで、さらに押し進めると『謎まで三マイル』になるのかな。ニクい作風だぜ。

ちなみにこれは後期の作品に関わることですが、この頃からモースは事件の中でトリッキーな役回りを演じ始めるんですね。要するに客観的に捜査するだけではなく、事件をややこしくさせるのにモース自身が一役買い始めるのです。この要素が、『森を抜ける道』とか『悔恨の日』あたりで爆発するようになるのかなと。

というわけで大満足の再読となりました。非常に初デクスター向きの作品だと思います。モースとルイスのキャラが関係が出来上がってくる、なんて要素もあるのですが、この2人については次の『死はわが隣人』の感想でまとめることにします。

原 題:The Dead of Jerich(1981)
書 名:ジェリコ街の女
著 者:コリン・デクスター Colin Dexter
訳 者:大庭忠男
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 148-5
出版年:1993.03.31 1刷
     1994.12.31 4刷

評価★★★★★
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