2017年3月21日、イギリスのミステリ作家、コリン・デクスターがお亡くなりになりました。86歳でした。

……いやもう、ほんと、ショックでして。レジナルド・ヒル、P・D・ジェイムズ、ルース・レンデルが亡くなった頃から既に覚悟していましたし、そもそも新作を出すこともなさそうでしたから、そんなに悲しくはならないだろうと思っていたんですが、全然そんなことなかったです。超悲しいです。たぶんこのブログをご覧になっている皆さんの想像の3倍くらいはショック受けています。
自分の一番好きな作家はアガサ・クリスティーなのですが、その次に好きなのがデクスターなんです。存命の作家の中で一番好きなのがデクスターだったのです。小学生、中学生とひたすらクリスティーを読み続け、あらかた読み終わり、次に何を読めばいいのか……と迷っていた高校生の自分にぱっと英国ミステリの新たな楽しさを教えてくれたデクスター。それがついに……。心から、ご冥福をお祈りいたします。

コリン・デクスターに初めて接したのは高校1年の夏休みでした。もちろん『ウッドストック行最終バス』ですね。権田萬治監修『海外ミステリー事典』で紹介されていたので興味を持ったのです。これにドハマりして、図書委員広報誌に感想を書いて載せました。そこからひたすら、順番も気にせずに片っ端から読み進めていきました。高3の受験シーズン真っ只中に、こんな記事も書いていましたね。文章も内容も未熟極まりないですが、まぁとにかくそれくらい好きだったということです。

というわけで今月の残りは、ひたすらデクスターの再読にあてることにしました。『ウッドストック行最終バス』『謎まで三マイル』『モース警部、最大の事件』は再読したことがあるので、それ以外で。ブログの記事の感想としてはあとマッギヴァーン『明日に賭ける』をまだ載せていないので、それを書いた後にしばらくデクスターが続くと思います。いま早速『キドリントンから消えた娘』を読んでいるんですが、もうね、この作品を書いた作者がいないんだと思うと……つらい……。

で、その前に、自分の思うコリン・デクスターの魅力について、簡単に書いてみることにしました。高3の時の記事に似ていますが、まぁ改めてということで。
ミステリファンの間、特に新本格ファンの間では、多重解決もの……というより、多重推理ものというか、ビルドアンドスクラップによる推理もの、として知られているのだと思います。また、瀬戸川猛資が『夜明けの睡魔』で苦悩する探偵としてコリン・デクスターを紹介したことも有名ですね。
ただ振り返ってみると、これらの点は確かに、間違いなく、魅力の大きなポイントではあるんですが、あくまで自分に関して言えば、デクスターのモース主任警部シリーズにはまったのってそこじゃないんですよね。大きく分けると、ズバリ以下の2要素じゃないかと思います。
①文章
②キャラクター

まず①ですが、デクスターの文章ってかなりクセのあるものだと思います。いわゆる翻訳文が苦手な人にはかなりキツいのではないでしょうか。( )や――を多用している上に、大庭忠男さんによる翻訳がどちらかといえば直訳的です。ただ、大庭さんの翻訳は、他の作家では非常に読みやすいことを考えると、たぶんデクスターの原文に寄せて意図的に直訳っぽくしているのではないかと思います。さらにスノッブというか、まぁ頭良さそうで捻くれた地の文ですし、その硬さによってユーモアを醸し出しているということもあります。レジナルド・ヒルなんかに近いですが、あれよりもクセが強いですね。
ただ、この文章がほんっとうに昔から大好きなんです。英国の知的階級っぽさ、大学などを舞台にした殺人、モースの捻くれたキャラクター、そうした内容にピッタリな文章で、そのユーモラスさは唯一無二のものだと思います。読んでいて本当に楽しいんですよ。

②は、まぁシリーズを読んでいると自然と大事な要素になりますよね。男性と女性でミステリ読者を分けるのは好きではないんですが、コリン・デクスターを好きな女性読者ってあんまり多くないのかなぁと前から疑っています。要するにモース警部のキャラクターがよく分からないと。なんでこのおっさんはモテるのかと。
で、まったくその通りです。モースのキャラクターって実際破綻していて、突然怒ったり、意味もなくモテたり、そのへん迷走する推理並みに理解しがたいところがあります。ぶっちゃけ「モテるおじさん」というキャラクターを与えられているだけで、なんでモテるのか、なんで怒るのか、ちゃんと描かれていないのではとも思えます。たぶんデクスターってそんなに繊細な感情とか書けるタイプでもないし……。
ところが、このしょうもないおっさんに、自分ははまってしまったのです。ストリップが好きな俗っぽさと、ワーグナーを聞く知性的な高尚さ。時々負けず嫌いで、ルイスに意味もなく突っかかってしまうところ。あと意味なくモテるところ。破綻しているからこそ、オンリーワンなものに仕上がっています。ルイスなんて(少なくとも初期設定では)モースより年上ですからね。どんな絡みなんだよと。ルイスや、ストレンジ警視正、ドーナツばかり食べているディクスン刑事、悪趣味な冗談好きの警察医などの、シリーズキャラクターもとにかく好きです。読んでいて笑っちゃうんだよなぁ。

これくらいでやめますが、今月いくつか読み返す中で、上に書いたことを自分でも再確認できたらなと思います。たくさんの傑作を生み出し、そして高校生の自分に最高の読書体験を与えてくれたコリン・デクスターに感謝を捧げつつ、デクスター再読に戻ります。

『悔恨の日』発売
画像は1999年9月16日発行のロンドン・タイムズ、p. 5 "Morse author condemns leak of his final words" 、『悔恨の日』発売翌日の記事です。
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