ラスト・ウェイ・アウト
『ラスト・ウェイ・アウト』フェデリコ・アシャット(ハヤカワ・ミステリ文庫)

テッド・マッケイは自分の頭に向けて拳銃をかまえた。妻と娘が旅行中の今日、とうとう自殺を決行するのだ。引き金に指をかけたそのとき、玄関の扉が激しく叩かれた。リンチと名乗った突然の来訪者は、ある「組織」からテッドへ依頼を伝えに来たと語りはじめる。その内容はあまりにも常軌を逸したものだった……。迷宮のごとき物語の果てには何があるのか。異様なるイメージと予測不能の展開が連続する、南米発の“奇書”。(本書あらすじより)

去年の新刊の読み残し。アルゼンチン・ミステリなのですが、いやもう、めっちゃ面白かったです。新本格好きにも受けそうな、一気読み確実のどんでん返しミステリです。これを去年のうちに読まなかったのは痛い……。

自殺しようとしているテッド・マッケイのもとに、セールスマン風の男が現れます。死ぬ前に悪人を殺し、さらに別の自殺しようとしている人を殺せば、いずれあなたを殺しに誰かがやってきますよ、と。その提案を魅力的に感じた彼はその組織の活動に加担するのですが、何かがかみ合わずおかしいことに気付き……。

序盤、とにかく何を読まされているのか意味が分かりません。第一部第二部が特に変で、『赤い右手』とか怪作系の何かを感じます。何が起きているのかをつかもうと第一部を読んでいたら、そういうレベルじゃない意味不明の第二部に突き落とされるという。いやー、よく考えたよなぁ。こんなに伏線を張るのに適した設定がありましょうか。イメージ的には台湾の島荘賞を取りそうな作品。
第三部に入りようやく何が起きているのか読者が把握できるとともに、ハヤカワっぽいサスペンスが始まります。ここも十分面白いのですが、前半ほどじゃないか、第四部の過去パートも王道だよなぁ……と思っていたら、第一部と第二部を伏線にどんでん返しがぶっこまれるのです。うわそっちに来たか、と褒めざるを得ません。

第三部以降の話が切り離されているので、あれっ途中で雰囲気変わった?と落差を感じてしまうのはややマイナスポイントですが、ま、これは仕方ないかなぁ。妄想と現実をうまいことミックスして真相を叩き出すやり方はやっぱり楽しいものです。映画化も決まったそうですが、SF映画監督が担当すればすごいことになりそう。

というわけで、スペイン語圏ミステリとの新たな出会いでした。サマンサ・ヘイズ『ユー・アー・マイン』とか今回の『ラスト・ウェイ・アウト』とか、毎年ハヤカワ・ミステリ文庫は何かしら好きな作品を出しているんですよね。その中から面白いのを掘り出すのが大変なのですが……(で、今回みたいにある程度評判を聞いてから読むっていう)。

原 題:La última salida(2016)
書 名:ラスト・ウェイ・アウト
著 者:フェデリコ・アシャット Federico Axat
訳 者:村岡直子
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 438-1
出版年:2016.08.25 1刷

評価★★★★☆
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