バーナビー・ラッジ
『バーナビー・ラッジ』チャールズ・ディケンズ(世界文学全集)

殺人事件を起こした父親が逃亡中に、バーナビーは生まれた。成長して青年になったとき、宗教一揆が勃発。バーナビーは逮捕され、獄中である人物と対面する――。暴動におびえるロンドン市民、迫害を受けるバーナビー! 一七八〇年の反カトリック暴動事件に材を取り、推理小説的手法を駆使した歴史小説。(本書あらすじ一部改編)

年越しディケンズ企画3回目。ついにハードカバー来ちゃったよこれ。『バーナビー・ラッジ』はあまり知名度がありませんが、『荒涼館』より前に書いた、ディケンズ最初のミステリ長編として一部で有名な作品です。ちなみに『荒涼館』は、文庫4巻と長いけど、100人近い登場人物の隠れた関係が次第に明かされ、名探偵である警部も登場し、殺人事件の謎が解決される傑作ミステリだよ! みんな読もうね!
で、『バーナビー・ラッジ』なんですが、うーんちょっと微妙かなぁ。今まで読んだディケンズの中では初めてハズレかも。

『バーナビー・ラッジ』について簡単にまとめると、
・ディケンズの比較的初期の長編
・『荒涼館』より前に書かれたミステリ要素のある作品(1841年連載なので「モルグ街の殺人」と同年)
・第1章を読んだポーが犯人が分かったと豪語したことで有名
・『二都物語』と並ぶ歴史小説
といったところでしょうか。

物語の始まる22年前、ある屋敷の主とその使用人が殺されるという殺人事件が起きます。この事件に関係していると思われるある不審人物が随所に登場するも、作者によってその正体が意図的に隠されています。そして終盤にトリックと真相が一気に明らかにされるという……なるほど、確かにこれはミステリだ。トリックも初歩的なものですが、確実にミステリであると言えるようなトリックなのです。
ただその殺人事件だけがメインではなく、むしろ主軸は副題にある「一七八〇年の騒乱の物語」、すなわちジョージ・ゴードン卿の率いるプロテスタントによる反カトリック騒動にあります。歴史上の人物であるゴードン卿よりも、その騒乱に巻き込まれる人々の運命や、恋愛が見どころなのでしょう。

ちなみにタイトルであり主人公であるバーナビー・ラッジは、作中の言葉を借りるなら「白痴」の若者で、主人公らしい活躍はしないのですが物語を動かす要素となるキャラクターです(22年前の事件で殺された使用人の息子でもあります)。ディケンズらしく登場人物は多彩で楽しく、特に死刑執行吏デニスが良いですね。
ただやはり、今まで読んだ作品の中では構成やプロットがそこまで凝っていなく(これまで読んだのが全て後期ディケンズだからかも)、上下二段500ページにしては話も平坦。ロミジュリ的要素もおざなりだし、何よりメインとなる反カトリック騒動がそこまで面白くないのです。これはイギリスの人だと、大塩平八郎の乱みたいな感じで興味深く読めるのかなー。全体的に長かった、という印象が強いです。

というわけで、まぁこの世界文学全集でしか読めない長編ですし、そんなにオススメすることもないかなぁ。来年は後期作品を読みたいです。『荒涼館』以降の作品の方が暗くて凝ってるともっぱらの噂です(解説の受け売り)。
ちなみにこの世界文学全集ですが、500ページほどの『バーナビー・ラッジ』に加え、100ページほどの『クリスマス・キャロル』も収録されています。有名だからね。

原 題:Barnaby Rudge(1841)
書 名:バーナビー・ラッジ
著 者:チャールズ・ディケンズ Charles Dickens
訳 者:小池滋
出版社:集英社
     愛蔵版 世界文学全集 15
出版年:1975.10.25 1刷
     1986.07.20 4刷

評価★★★☆☆
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