地下組織ナーダ
『地下組織ナーダ』J・P・マンシェット(ハヤカワ・ミステリ)

頭を撃ち抜かれ、オートバイごと道路に叩きつけられながらも、警官は誘拐団の運転手役の男に銃口を向けて狙いをつけた。アナキストの悪党め、一発でしとめてやる……。だが、相手はいやにゆっくりと拳銃をポケットにしまうと、アルミニューム製のパチンコを取り出しはじめた。鋼鉄の球をひっかけて、ゴムを引きしぼる――冗談じゃない。中世の戦争じゃあるまいし、石投器で向かってきやがる――その時、はねかえるゴムの音が唸った。鋼鉄の球は官給のヘルメットをあっさり突き通した。警官はがっくりと首を前に折る。すでに死んでいた……。
一匹狼の殺し屋エポラールは政治運動とまんざら縁がなかったわけではない。アルジェ、キューバと渡り歩き、革命家と行動をともにしてきた。しかし、つねに金儲けが第一であり、負ける戦いは避けるのが信条だった。そんな彼が、アルジェ時代の戦友ブエナベントゥーラの指揮する過激派グループ“ナーダ”に参加したのは、彼自身にも理解できない衝動からだった。四人の男と謎の女カッシュが準備を進めていたのは、駐仏アメリカ大使の誘拐計画――勝ち目の薄い戦いだ。だが、寒い金曜日の夜半、“ナーダ”は襲撃を開始した……!
強烈なスピード感とユニークな文体で描く暴力の世界。絶大な人気を博す新・暗黒小説の若き鬼才の第二段!(本書あらすじより)

マケプレオーバー2000月間、8冊目です(まだ去年に読んだ本の感想を書いている)。なるほど、ポケミスのそっち系のフランス・ミステリか。
左も左のアナキストたちがアメリカ大使を誘拐しようとする様を、徹底的にそのアナキスト側に立って描いた作品。敵対するゴエモン警部がクソオブクソの非情さを見せるので、必然的に主人公たちのある種の目的のない正義が現れるのです。……が、読んでいて思うのはそういうことじゃないんですよ。
時代の閉塞感に不満を覚えた主人公たちの行動は、正直やけっぱちで、行動を起こそことにこそ意味があるように見えます。そこに表面には現れていない狂気が見え隠れしているように思えてしまいます(アナキストの一人の妻が精神病だったりするのもそう)。淡々と、短い章をたくさんつなぎながら、どうにもならない状況でもがく男たちの死に様(失敗することは最初に示されてる)が提示されます。時代だなぁ(語彙不足)。

同じポケミスのフランシス・リックの『危険な道づれ』の空気感と非常に近いかもしれません。まぁ『危険な道づれ』の方が変な作品ですが、『地下組織ナーダ』もやっぱり書き方がおかしくて、時系列の前後の仕方が章ごとどころか章の中でもずれたり前後したりするので読んでいて妙な感じになります。でもそれはそれで違和感がないってのがある意味すごい。
ただ、この系統のフランス・ミステリってそんなに好みじゃないんだよなぁ。ノワールの中でも、『おれは暗黒小説だ』とかの方が勢いと変なユーモアがって好きというか。救いのない、ユーモアもない、シリアスなフランス・ミステリのエグさってすごいものがありますよね……。

ところで話は変わりますが、作中でキャモンベールなるものをパンに挟んで食べていてなんじゃそらと思ったのですが、もしかしてこれカマンベールのこと?

原 題:Nada(1972)
書 名:地下組織ナーダ
著 者:J・P・マンシェット J.P. Manchette
訳 者:岡村孝一
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1241
出版年:1975.04.30 1刷

評価★★★☆☆
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