ガール・セヴン
『ガール・セヴン』ハンナ・ジェイミスン(文春文庫)

私は必ず日本に帰ってみせる。石田清美、21歳。家族を何者かに惨殺され、ロンドンの底で生きている。そこに飄々とした冷血の殺し屋マークがやってきた。僕が君の家族を殺した人間を探してみようかとマークは言うが――暗黒街からの脱出を願う清美の必死の苦闘を描き切る鋭利なる文体。徹頭徹尾、女子が女子を書いたノワール。(本書あらすじより)

「女子による女子のためのノワール」とか書いてあると、どうしても「何だよ男子はお呼びでないってのかい」みたいな気分になってしまいますが、いやいやそんなことはありません。25歳の新鋭作家が書いた、正統派のノワール作品です。

舞台はロンドン。家族を何者かに殺され、ナイトクラブ〈アンダーグラウンド〉で働く石田清美21歳(ハーフ)、通称セヴンが主人公。ふとしたことからギャングに目を付けられ暗黒街に片足を突っ込む羽目になり、何としてでもロンドンを脱出し、父の故郷日本へ帰ってやる、さらに家族を殺された復讐をすべく真実を突き止めてやる、と息巻く清美の物語です。

どれだけストーリーが典型的であっても、語りとキャラクターが見事であればいくらでも読ませる作品になる、ということがよく分かります。
主人公セヴンの一貫性が気に入りました。破滅的な道を選ぶ愚か者のようでもあるし、自分の居場所を見つけたいという確固たる方針があるようにも見えます。怒りと無気力によって行動していくセヴンは、ハチャメチャなようだけど、これはこれで確固たるキャラクターなんです。
てっきりサラ・パレツキーのヴィクみたいな、ザ・3Fハードボイルド主人公、的なタイプの主人公なのかと思ったら全然違ったんですよ。良い意味で主人公然とした強さに満ち満ちているわけではなく、思い切った行動もとる一方で、どうしようもなく自ら泥沼に落ちていくこともあります。だからこそ、等身大で、人間らしく感じられます。「女子による女子のためのノワール」とはあるけど、男性も取っつきやすいのでは(むしろ女性全員がこの主人公を見て喜ぶのかなぁという疑問を感じたり感じなかったり)。

思いっきり日本がフィーチャーされているわけですが、日本描写は非常に的確で、逆につまんないくらい真っ当です。その他の例えば食えない男性キャラクター陣(家族を殺されたセヴンの復讐を助けようとする物腰の柔らかさに定評のある殺し屋マークとか、セヴンの愛人であるようなないような草食系中途半端男ノエルとか)も、実にちょうど良い“脇役”っぷりを発揮しています。
っていうか書きっぷりが全体的に達者なんですよね。読みやすいし、けど薄っぺらくないし、感情の起伏を上手いこと織り込んだ一人称がお見事。ライトなノワールとして、気軽に手に取って読まれれば良いなと思います。

原 題:Girl Seven(2014)
書 名:ガール・セヴン
著 者:ハンナ・ジェイミスン Hannna Jameson
訳 者:高山真由美
出版社:文藝春秋
     文春文庫 シ-23-1
出版年:2016.08.10 1刷

評価★★★★☆
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