誕生パーティの17人
『誕生パーティの17人』ヤーン・エクストレム(創元推理文庫)

一族の長老エバ・レタンデルの90歳の誕生日を祝うパーティの夜、密室の中で発見された二つの死体。ドゥレル警部の捜査の結果、単純な事件と思われたものが、徐々に不可解な連続殺人の様相を呈してくる。だが、そうだとすると、一体誰が、何のために、どのように行なった犯行なのか? 「スウェーデンのカー」と言われる著者の、本邦初紹介作品!(本書あらすじより)

よく翻訳小説は苦手だという人の理由に「登場人物の名前が覚えられない」というのがあります。翻訳小説読みから言わせればそれは甘えということなんでしょうが、正直自分としては苦手な方の気持ちも分かります。ということをつくづく思わせたのが、スウェーデンのカーことヤーン・エクストレムの唯一の邦訳長編『誕生パーティの17人』なのでした。

一族の長老の誕生日を祝うために屋敷に集結した親族たち。遺産をめぐって険悪な空気漂う中、殺人事件と、密室での自殺と思われる事件が発生し……。
あらすじだけ見ると黄金時代ど真ん中で、総じて決して悪い作品ではありません。古き良き本格ミステリを模した、1975年のスウェーデン・ミステリとして読む価値はあります。密室トリックも、まぁ全体的にはぁん?って感じとは言え、評価できるポイントはあるし、一族の確執を利用したどろどろ遺産ミステリとして複雑な話をちゃんと作れているのも偉いのです。終盤で仕掛けられたトリックも、読者の頭の中にできている定型パターンをきれいに外しており面白いと思います。この作品の最大の評価ポイントはこのトリック(というか仕掛け)なんだろうなぁ。
複雑な家系図に基づく似たような名前ばかりの登場人物が17人という地獄のような設定も、なんだかんだ頭の中に入っては来るので必ずしもマイナスポイントでしかないというわけではありません。400ページ延々と家族に対する尋問だけなのにちゃんと読ませるのはさすがですね、こういうオーソドックスな一族物ミステリはやっぱり好きです。17人全員を描き切れていない故に、犯人当てとしては若干甘くなっているのがもったいないのですが。

しかし、しかしですよ。やっぱり17人は多すぎたんですよ……全員出し切れなかったんですよ……証拠も少なすぎてじゃあ17人誰が犯人でもいいじゃんってなるんですよ……つまりそういうことなんですよ……。
だって名前がエバ、エバ、エヴァ、エベ、エボーン、エリック、エレン、エバ-レナ、ヴィクトル、ヴェラ、ヴェローニカなんだもん、無理ですよ! 覚えるまで何回家系図見返したと思っているんですか! バカ!(逆ギレ)

密室トリックなども、悪くないけどこうもっと上手くやれたんじゃないかなと思いますし(開いてたのとか凶器とか)。期待していた割には、ちょっとパッとしない作品だったかなぁという印象です。ただ、シリーズ何作もある中でこれ1作しか翻訳が出ていないというのはさすがにもったいないなぁ……北欧ミステリへの関心が高い今なら、創元が上手いこと売り出せばまたシリーズを出せるんじゃないでしょうか。今なら原書から翻訳できる方、いっぱいいらっしゃるだろうし。

原 題:Ättestupan(1975)
書 名:誕生パーティの17人
著 者:ヤーン・エクストレム Jan Ekström
訳 者:後藤安彦
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mエ-1-1
出版年:1987.01.23 初版

評価★★★☆☆
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