J・G・リーダー氏の心
『J・G・リーダー氏の心』エドガー・ウォーレス(論創海外ミステリ)

52歳独身、山高帽に黒いフロックコート。鼻眼鏡に雨傘姿の名探偵が難事件に挑む! ファン待望の傑作短編集!!(本書あらすじより)

エドガー・ウォーレスといえば、「正義の四人」シリーズや『キング・コング』の原案、『真紅の輪』などが有名、と言いたいところですが、読んでいる人どれくらいいるんだろう……。『正義の四人』だけは昔から気になっているのでついこの間買いました。で、今回初めて読むウォーレスは、役人J・G・リーダー氏を主人公とする「クイーンの定員」に選ばれた短編集です。
収録作は以下の通り。

「詩的な警官」The Poetical Policeman
「宝さがし」The Treasure Hunt
「一味」The Troupe
「大理石泥棒」The Stealer of Marble
「究極のメロドラマ」Sheer Melodrama
「緑の毒ヘビ」The Green Mamba
「珍しいケース」The Strange Case
「投資家たち」The Investors

ぶっちゃけ飯城勇三さんの解説が全て言い尽くしている気がしなくもないです。

このリーダー氏、ホームズ以降個性化に尽力を注がれること著しい名探偵たちの中でも、(ある意味での)“不気味さ”は頭抜けています。「犯罪者の心を持つ」とのたまう超悲観的なこの御仁は、弱気で低姿勢、しかし感情の死滅した武闘派という恐るべき52歳なのです。
他人の悪意に敏感で、初見の犯罪者も悪人と見抜き、時には仕込み杖を振り回し、見事なスリの手腕を示しつつ犯罪者同士の殺し合いを目論むリーダー氏……もはやどっちが犯罪者なのか分かりません。金田一少年の事件簿の名悪役のセリフに「だが常に“犯罪の方法”を考えているという点では犯罪者も探偵も紙一重だと思いませんか?」というものがありましたが、まさにそれを地で行くかのような設定。にもかかわらず、リーダー氏はやはり平凡であり、うだつの上がらない中年役人であり、今日も親子ほど歳の離れたキャリアウーマンに片想いをするのです。普通に怖いです。

そんな無敵超人が活躍する短編集なわけですから、フェアな謎解きというよりはホームズ探偵譚のタイプに近いです。基本的にあらゆる犯罪者をリーダー氏がめちゃくちゃにやり込めていく話なので、他のホームズのライヴァルたちとはかなり差別化は図られているのかな? 安定の「(翻訳が遅れた)クイーンの定員」という感じですので、興味がある方向けです。
ところでリーダー氏シリーズには長編もあるのですが、無敵超人である彼が「長編」でなければ解決できない事件とはどういったものなんだろう……。

原 題:The Mind of J. G. Reeder(1925)
書 名:J・G・リーダー氏の心
著 者:エドガー・ウォーレス Edgar Wallace
訳 者:板垣節子
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 177
出版年:2016.08.30 初版

評価★★★☆☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1293-5b40a555