メグレを射った男
『メグレを射った男』ジョルジュ・シムノン(メグレ警視シリーズ)

隠退してドルドーニュに住む元同僚の誘いに、メグレの旅心は動いた。寝台車の相客が気になって、メグレは一晩中まんじりともできなかった。明け方、森の中を徐行中の列車からその男がとび降りた。とっさの判断で、メグレもあとを追った。男は発砲し、メグレは肩に傷を負った。病院で意識をとりもどしたとき、判事、検事、署長、書記、警察医の五人の男が彼をとりかこんでいた。人もあろうにメグレが、ここベルジュラックで最近起こった二件の通り魔的殺人事件の容疑者にされたのだ。旧友の証言で容疑ははれ、今度はメグレがベッドに寝たままで真犯人探しに乗りだす。(本書あらすじより)

瀬名さんの感想がイマイチだったのでどうかなーと思っていたのですが、いやいや、これかなり面白かったですよ。メグレシリーズの中では異色作寄りですが、だからこそ定型パターンを外れており、シリーズを読み慣れた読者ほど楽しめると思います。

冒頭、メグレは電車を飛び降りた怪しげな男を追いかけ自分も電車を飛び降ります。撃たれて意識を失ったメグレは入院することになるのですが、そこで町を騒がす通り魔連続殺人事件を知ります。

確かに人物描写などいつものメグレと比べると書きっぷりは悪いんですが、純粋なアームチュアディティクティブとして成立させているあたり、本格ミステリとしてはかなり興味深い作品です。ベッドの上で、周囲から見ると半ば狂人かのような振る舞いをしながら執拗に殺人犯を追うメグレの姿は、まさに名探偵そのもの(笑)
とある証拠から町の名士の中に連続殺人犯である狂人がいると容疑者を限定した上で、意外な展開を(いつものように序盤だけではなく)終盤まで繰り返しているので、普通にリーダビリティも高め。相変わらずラストが駆け足でごちゃごちゃしていますが、真相の複雑さもなかなかですし、全体としては悪くないでしょう。

あといつも微妙な扱いのメグレ夫人が、今回は大活躍。終始寝たきりのメグレ警視に付きっきりで、警視の代わりに町中から情報を集め、死体まで見に行き、あれこれと活躍しているのも珍しく楽しかったです。メグレ夫人っていつもチョイ役な上に、メグレに怒鳴られてばかりだからな……。

というわけで、これは普通にオススメです。メグレの打率が地味に上がっている気がするぞ、いいぞいいぞ。

原 題:Le fou de Bergerac(1932)
書 名:メグレを射った男
著 者:ジョルジュ・シムノン Georges Simenon
訳 者:鈴木豊
出版社:河出書房新社
     メグレ警視シリーズ 42
出版年:1979.09.15 初版

評価★★★★☆
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