ドーヴァー⑥/逆襲
『ドーヴァー⑥/逆襲』ジョイス・ポーター(ハヤカワ・ミステリ)

岡の上の小さなサリー・マーチン村は相次ぐショックですっかり平和な眠りを破られてしまった。地震、殺人、そしてロンドン警視庁の悪評高いドーヴァー主任警部の出現である。 悪夢のような地震の夜が明けると、サリー・マーチン村は多くの家屋が倒壊し、道路が切断され、惨たんたる状態を呈していた。死者の数も少なくなかった。地滑りの土砂から発見された建築屋のチャントリーもそのひとりだった。ただ、チャントリーは絞殺されており、他殺だった。現場の混乱状態から難事件になることを予想した地元警察は早速ロンドン警視庁に応援を求め、かくてドーヴァーの出動となったのだ。
サリー・マーチン村に到着したドーヴァー警部は不満だった。まず、村でたった一軒の居酒屋は地震で潰れ、例の自分の嫌いな人間を犯人にするというドーヴァー式捜査法も面白くない人間が多すぎてたちまちいきづまってしまったためであった。ドーヴァーが滞在したホテルは、意地悪ばあさんやら占い気違いの老婦人などが居住者で老人ホームを思わせ、外では破廉恥なヒッピーに出会うのだ。すっかり気を悪くしたドーヴァーはマグレガー部長刑事に困難な捜査を押しつけ、自分は安楽椅子探偵をきどってベッドから動こうとはしなかったが……。好評ユーモア本格、ドーヴァー・シリーズ第6作!(本書あらすじより)

あーいいですいいです、こんな長いあらすじ読まなくって。というわけでドーヴァー6作目です。
ドーヴァー警部シリーズは大きく2系統に分かれます。比較的マトモな動機と真相とユーモアが売りのもの(2作目、3作目、5作目など)と、明らかにマトモではない動機と真相とユーモアが売りのもの(1作目、4作目など)。後者より前者の方がユーモア要素が強く感じられるのはなぜだ?
で、今回の6作目ですが……実にこの中間というか、あるいは両要素を兼ね備えている、まぎれもなくドーヴァーシリーズの中でも上位に入るであろう作品なのです。当然のごとくおすすめです。

大地震の結果、周囲から半ば閉ざされてしまった集落で、大地震の直後殺人事件が発生。ロンドン警視庁から呼ばれてやってきたドーヴァー主任警部とマグレガーは部長刑事は、いつものごとく捜査を開始します。

地震による事故死に見せかければいいのに、犯人はなぜ絞殺などという殺害方法を取ったのか……という謎が中心になるかと思いきや、そんなことはどうでもよかったんだぜ(白目)。そんなことより、地震直後で何もかも不便な環境で、耐えられずベッドに引きこもるドーヴァーが面白すぎます。何しろ酒がないからね! ドーヴァーには無理だね! いつも以上に捜査どころじゃないね!

アクの強い村人たちへの聴取を(マグレガーが)続ける中、まさかのドーヴァーの命を狙った(かもしれない)事件も発生し、証拠も何にもないぞ、けどこんなところから早く帰りたい、どうする……というところで、安楽椅子探偵を決め込んでいたドーヴァーによるまさかの推理が始まります。
いやてっきりね、例によって証拠も何にもない思い付き推理かと思ったんですよ。っていうか確かにそうなんですよ。おまけに犯人特定のロジックもクソもないし、絞殺の理由とかないも同然だったし、こりゃあひでえやみたいな推理なんですよ。
ところが、ある一点で、ドーヴァーの神業的推理が光るのです! きちんと示されていた伏線と手がかりを回収し、名推理がきらめくのです! そしてドーヴァーシリーズらしいえげつない真相が飛び出すのです! まさかこんなダメ本格にキレキレロジックが出るとは!!みたいな驚きもあり、はっきり言ってこれにはぶったまげました。ドーヴァーやるな……別にやる気だしたら名探偵とかそんなやつですらないくせに……。
っていうか仮にあの人にアリバイがなければかばっているパターンにしか見えないけど、これマジで提示されている通りの真相なんでしょうね……嘘だろ……フーダニットって何だったんだ……。あと救われない系真相がここまで心に響かないのもすごい。ドーヴァーだし。

というわけで、相変わらず面白すぎるドーヴァーシリーズだったのでした。このシリーズって、ステリにおけるほぼ全ての自白パターンが含まれているんじゃないかと思っているんですが、残る作品はどうなることやら。あと4作かぁ……年1冊ペースで4年しかもたない……。
なお、今回特に面白かった名分です。


「事件解決か、うん?」とドーヴァーは一瞬その考えの輝くばかりの新奇さに心奪われたが、その反応もすぐ消えてしまった。「いうのはやさしいが、やるのはなかなかだぞ」


マグレガーは危険信号を感じ取った。ドーヴァーはじぶんの生命が危険にさらされているような時でも、二分間以上同じことを集中して考えることができないのだ。



原 書:Dover Strikes Again(1970)
書 名:ドーヴァー⑥/逆襲
著 者:ジョイス・ポーター Joyce Porter
訳 者:乾信一郎
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1198
出版年:1973.04.30 1刷

評価★★★★☆
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