死んだライオン
『死んだライオン』ミック・ヘロン(ハヤカワ文庫NV)

満員のバスのなかでひっそりと死んだ老人は、元スパイだった。誰も注目しなかった小さな死に目を留めたのは、〈泥沼の家〉のリーダー、ジャクソン・ラムだけだったが……閑職に追いやられた情報部員たちが、ふたたび最前線で痛快な大活躍。好評『窓際のスパイ』に続く待望の第2弾。(本書あらすじより)

というわけで続けて読んじゃいました。ミック・ヘロンの「泥沼の家」シリーズ第2作です。今回も楽しかった……ミック・ヘロンさんったらまたしても面白いスパイ小説を書いちゃってーやだーみたいな気分。

『窓際のスパイ』での活躍にもかかわらず、相変わらず死んだように活力のない「泥沼の家」。ところがボスであるジャクソン・ラムが元スパイの死に疑問を持ったことで、閑職スパイたちがまたしても動き出します。さらに「泥沼の家」の2人のメンバーに、本部の職員からロシアの富豪を接待するよう内密の指令が。はたしてイギリスとロシアの間で何が起きているのか……?

前作もそうなんですが、冷戦後のスパイ小説として適度に自然に、適度に作り物っぽく題材を選んで書ける、というのが実に見事。今回は冷戦終結後20年を経たからこそ起きる事件なのですが、そこそこリアルであり、そしてそこそこフィクションっぽいという、このバランスが大変良いです。
また、前作よりだいぶこなれた印象で読みやすく感じました。一見ばらばらの複数の筋を同時進行させるのが上手く、さらに登場人物と作者が敵と読者の裏の裏の裏の裏まで読んでいるので、表面上見えているストーリーが片っ端からひっくり返される始末。ストーリーが展開すると程よく説明がなされるので、これだけ複雑なプロットでも実に自然に流れていきます。

視点人物をころころ変えて読者を騙すのが明らかに上手くなっているし、英国っぽさ全開のユーモアも健在だし、終盤はダイ・ハードだしという感じで、これだけの好条件が揃ったスパイ小説も珍しいのでは。前作のネタバレがないよう書かれてはいますが、ぜひ第1作から読んでいく価値のある好シリーズ。今回もおすすめです。

っていうかやっぱりスパイ小説もどんどん読んでいかないと……。代表的なところをあげると、『三十九階段』『秘密諜報部員(アシェンデン)』『ディミトリオスの棺』『ヒューマン・ファクター』『カジノ・ロワイヤル』『寒い国から帰ってきたスパイ』『針の眼』『消されかけた男』『パンドラ抹殺文書』あたりでしょうが、まだフリーマントルしか読んでない……が、頑張ろう。

原 書:Dead Lions(2013)
書 名:死んだライオン
著 者:ミック・ヘロン Mick Herron
訳 者:田村義進
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1375
出版年:2016.04.15 1刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1274-59fc5cc7