古書奇譚
『古書奇譚』チャーリー・ラヴェット(集英社文庫)

かのウィリアム・シェイクスピアは果たして本物か――気弱な古書商ピーターが手にした本は、世界を揺るがす大論争に決着をつける奇書『パンドスト』初版本だった。癖のある書き込み、亡き妻そっくりの謎の肖像画と共通する“B・B”のサイン。やはり偽書なのだろうか? 本物であることを願うピーターは真贋と“B・B”の調査に乗り出すが……。冒険あり、歴史あり、愛と涙あり。エンタメ・ビブリオミステリの傑作!(本書あらすじより)

うううううん、微妙。カルロス・ルイス・サフォンを経た我々は、もはやこんなありきたりのビブリオ・ミステリでは満足できないのだよ。

妻アマンダを亡くしたばかりの書籍商ピーターが、シェイクスピアの正体に決着をつけるであろう文学史上の大発見本である『パンドスト』を手に入れ、そこからある陰謀に巻き込まれる現在パート。ピーターが学生時代古書の魅力を知り、またアマンダに出会う甘酸っぱい過去パート。そして後に『パンドスト』を手にした過去の人物たちが描かれる歴史パート。の3つが交互に描かれる、という構成になっています。
このうち過去パートは、文系男子の妄想全開という感じで、確かに読んでいて大変よろしいのですが、どちらかというと息抜きで、本筋とは別の話。つまりシェイクスピアの正体に迫り、『パンドスト』を利用する何者かと対決するという主筋は現在パート、および歴史パートで描かれます。歴史パートは特に作者の知識が存分に生かされており、こちらもなかなか楽しめます。特にある男の復讐に燃え贋作づくりに励む様は壮絶。

ところが、結局ピーターが迫る過去の真実はほぼ歴史パートで語りつくすうえ、最後には手記という飛び道具に出てしまうので、『パンドスト』の来歴に迫る!みたいな話なのに、なんというか、はぁそうですか以上の驚きが一切ないのです。じゃあ現在パートが手に汗握るかといえば、こちらはこちらでよくある展開以上のものにもならず。とってつけたような現在パートの新しい女性との出会いもそうですが、結局のところアメリカ人の書いた英国(が舞台の)ビブリオ・ミステリは、やっぱりアメリカ人の書いたエンタメでしかないのです……とかいうとアメリカ人にめちゃくちゃ失礼なんだけど。

総じてこちらの期待を上回れなかったかな、という感じです。気軽に楽しめるお手頃エンタメミステリとしてはいいのかもしれませんが、やるならもっと作りこんで欲しいな、と思ってしまうのは贅沢なのかなぁ。

原 書:The Bookman's Tale(2013)
書 名:古書奇譚
著 者:チャーリー・ラヴェット Charlie Lovett
訳 者:最所篤子
出版社:集英社
     集英社文庫 ラ-13-1
出版年:2015.11.25 1刷

評価★★★☆☆
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