獄門島
『獄門島』横溝正史(角川文庫)

獄門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が! 後世の推理作家に多大な影響を与え、今なお燦然と輝く、ミステリーの金字塔!!(本書あらすじより、一部削除)

今月の月イチ国内ミステリは、横溝正史です。
ついに、ついにですよ、横溝正史を読む時が来たのです! 記念すべき一冊目は『獄門島』! 『東西ミステリー・ベスト100』で1位に輝いた作品だぜひゃっはー!!
いざ読んで、なるほどなぁ、懐かしいなぁ、という感じです。めちゃくちゃキッチリカッチリしたシチュエーション物正統派本格ミステリに、戦後日本という舞台背景を完璧に融合させると、こういうシロモノが誕生するのかと。大変楽しめました。

時は1946年(発表時期は1947~1948年)、瀬戸内海の島における、見立てを用いた三姉妹連続殺人事件を、その島を訪問していた金田一耕助が解決する、というものです。金田一耕助シリーズとしては長編2作目に当たります。

というわけで、島! 対立する本家と分家! しばらく島を離れている息子! 座敷牢! 三姉妹! 見立て!と、めちゃくちゃスタンダードな本格ミステリっぽさに満ち溢れた作品なのですが、そもそもこれを読んで「スタンダード」だ、となぜ自分が感じるのかを突き詰めて考えると、これはもう完全にマンガ『金田一少年の事件簿』の影響なわけですよ。ついに本元を読んだのかと。こういう小説を中学生のうちに読んでいたら、さぞ直球中の直球で刺さったんだろうなぁと思うわけです。
また、中学生のころ自分が一番はまっていたのはアガサ・クリスティーでした。雰囲気もトリックも犯人も全然違うというのは分かった上で言うんですが、これまで読んだ国内ミステリの中でも一番クリスティーっぽさを感じたのです。「スタンダード」な本格ミステリって、こういうのだよね、という感覚を自分に植え付けた二大要素と、見事にシンクロするわけですから、そりゃあ楽しいわけです。シチュエーション本格最高!

謎解きとかトリックとは違う話を続けますと、こんなこと言うと失礼ですが、文章や光景がすごく頭に入って来やすくって、通俗小説として単純に上手いんです。図や絵が一切なくても、島の中の寺と家の配置だとか、鐘の仕組みだとか、なんとなく伝わりますし、ある程度伝われば十分なように書かれています。アリバイとか時間もそうですね、ちょこちょこタイムテーブルも出ますが、なんとなく読んでいれば状況は分かります。このへんのバランスって、案外難しいんじゃないかなと。

見立てについては、割愛しましたがもはやあらすじで書かれてしまっているくらいには読者はすぐに気付くので、金田一耕助が気付くまでに時間がかかりすぎかなと思います。ただし、真相に到達できるかというと、ある意味で大がかりな仕掛けを見抜くことは非常に困難でしょう。本家とか分家とか家制度とか戦後日本とかの要素が見事に合わさっており、海外ミステリの黄金時代の作品群を継ぎつつ、それらとは明らかに違う、日本ならではの黄金時代の作品、という印象を受けました。

いやー、予想通りかなり面白かったですね。新本格なんか一切気にせず黄金時代フォロワーの昭和本格勢だけ読んでいた方が幸せなのではないか、ということがまた確かめられてしまいました。ははは。

書 名:獄門島(1947~1948)
著 者:横溝正史
出版社:角川書店
     角川文庫 よ5-3
出版年:1971.03.30 初版
     1996.09.25 改版初版
     2009.04.15 改版32版

評価★★★★☆
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