第三の女(夏樹静子)
『第三の女』夏樹静子(光文社文庫)

晩秋のパリ郊外。時ならぬ嵐で雷鳴が轟き、バルビゾン村の古びた小さなホテルで停電となった。冥暗の中で、偶然出会った日本人の男女が過ごした夢のような時間。そして、誰にも明かすことのできない黙契が因で起きる動機なき連続殺人事件が、福岡につづき、箱根で。容疑者には完璧なアリバイが……。美しくも哀しい愛の行方。フランス犯罪小説大賞受賞作。(本書あらすじより)

今月の月イチ国内ミステリは、今年の3月にお亡くなりになった夏樹静子です。どれを読もうか迷ったのですが、後輩にすすめられた『第三の女』にしました。クリスティーじゃないのよ。
フランス犯罪小説大賞受賞作ということですが、いや確かにこれはフランス人が好きそうなタイプの作品。程よい分量でがんがん読ませ、幻想的でロマンティックな雰囲気もまぜながら、意外なオチを持ってくるという、とんでもない作品です。いやすごい。すごいけどエグい。俺はこういうラストがひっじょーーーに苦手なんだ……。

基本的には倒叙&交換殺人物です。縁もゆかりもない2人の男女が、お互いの殺したい人間を殺す、というだけ。そこに、視点人物である男の、女と接触することなく殺人を計画・実行しかつ女に近付きたいという悩み、さらに警察側の捜査が交互に描かれ、事件はクライマックスにたどり着くのです。

冒頭の男女の出会いの描写が幻想的で、物語は最後までどこか浮世離れしたロマンスであり続けるため、サスペンスでありながら一風変わった恋愛小説のようですらあります。昭和のミステリ作家はみんな小説が上手いね……まず読ませるし。
真相、というかどんでん返しについては、かなりゆっくりと迫っていくため、読者にもピンと来る人が多いでしょう。シンプルな騙しですが、この一点が殺人を計画した男女の心理描写と結びついて、大変味わい深いものになっています。

というわけで本当に上手いんですが、もうこれはあれです、完全に個人的な好みですが、自分は手遅れ感のあるラストと、誤解されて終わるラストがどちらも心底苦手なのです(でもたいていそういう作品はぐうの音も出ない傑作だったりするから困る)。つらい倒叙って警察が迫ってきてからが本当につらいんですよ。真相ではなく、警察の結論部分がもうぐぇぇですけど、うぅ、でもこれは評価せざるを得ない……。
何にせよ、非常に完成度の高い作品でした。夏樹静子、また読んでみたいですね。


書 名:第三の女(1978)
著 者:夏樹静子
出版社:光文社
     光文社文庫 な-1-26
出版年:2007.05.20 初版

評価★★★★☆
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