シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件
『シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件』J・ソアレス(講談社)

ひょんなことからブラジルに招かれた名探偵。謎の連続殺人事件も得意の推理で即刻解決――と思いきや、美女や名物料理に気をとられているうちに、事件は大迷走! あのホームズが誰にも語りたくなかった、人生最大の難事件!! 全世界を笑いの渦に巻き込んだ、ユーモア・ミステリーの大傑作。(本書あらすじより)

先日ブラジル・ミステリのパトリーシア・メロ『死体泥棒』を読みましたが、なんと翻訳されているブラジル・ミステリって数作しかないんですよ。で、そのうちの1つが見事積ん読棚にあったので、絶好の機会とばかりに読んでみました。
タイトル通りホームズのパロディです。ホームズがブラジルに渡って皇帝の依頼のもと盗まれたストラディヴァリウス探しに乗り出したところ、残忍な手口で女性を殺して回る殺人犯も追うことになる、という話。筋立て自体は(ホームズっぽくないとはいえ)真っ当で、ごく普通のホームズパロディです。
ただ、パロディとしてもパスティーシュとしても中途半端というか。ブラジル人のためのホームズパロディ、という感じで、全体的にややだれ気味なこともあり、あまり楽しめませんでした。オチだけはいいんですけどね。

まずパロディ面について言うと、ホームズのキャラクターは、知識量や言動についてはほぼ原典通りだけど、相手の見た目から推理することはからっきし、という状態(ただし外れていることに本人があまり気付いていないので、シュロック・ホームズみたいな感じですね)。だとするとなぜ世界的名探偵になれたんでしょうね……まぁいいや。ワトスンはただのアホです。
さらに、ホームズが恋に落ちるも童貞を捨てられないとか、大麻にハマるとか、いろいろネタになりそうな面白シーンは多いのです。ホームズが「シリアルキラー」という単語を思い付く場面とか笑えました(ちなみにこの犯人、新聞紙上では「皮膚コレクター」と呼ばれています。す、スキン・コレクター……)。中南米の人が読めば、ブラジルの実在の皇帝ペドロ2世がメインで登場したり、ダイキリ誕生秘話が明かされたりと、もっと楽しめるのではないかと思います。

というわけで、パロディとしては良さそうなのですが、問題は事件自体はすごくマジメに展開することなんですよね。ここだけパスティーシュっぽいのです。だからテンポは悪いし、結局だれちゃうし。連続殺人事件自体はシビアで、ヴァイオリンの弦の本数だけ殺人が起きるのですが、こちらの緊迫感も微妙。登場人物がやたらと多いのを作者がさばき切れていないのも問題です。
そして明かされる意外な犯人とは……なんてことより、まずはこのぶん投げまくったラストですよ。これはすごいです。はっきり言ってこのオチだけは高く評価したいです。っていうかこのオチだけ周りに話して聞かせたいくらい。こう考えると、無責任な終わらせ方にも納得できます。

というわけで、どうせならもっとユーモアミステリとしてドタバタさせてくれる方が好みだったかなぁ。わざわざ単行本を探し出してまで読むほどの作品ではないかもしれません。

原 題:O Xangô de Baker Street(1995)
書 名:シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件
著 者:J・ソアレス Jô Soares
訳 者:武者圭子
出版社:講談社
出版年:1998.12.08 1刷

評価★★☆☆☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1252-b65024bf